昨日借りてきた本をどれから読もうかと、まず「父の遺産」(フィリップ・ロス 柴田元幸訳 1993年 集英社)を。「試し読み」した。
驚いたことに、そのまま読み続けて、どうしても止まらず、夕方までに読み終えてしまった。最初の1ページからノックアウトされた感じだ。
最近読んだ、「プロット・アゲンスト・アメリカ」と登場人物が同じなので、話に溶け込みやすかったせいもある。
ただし、「プロット…」の方は、完全なフィクションだが、「父の遺産」は「私小説」の形をとっている。読み終えた後によく考えてみると、もちろんすべてが事実とは言えそうもないが、事実を超える「真実」を語っていると思われる。
取り上げたテーマが、「老い」の問題であり、最初の話題は主人公フィリップの父親の老いと大病の介護の問題。
父親の老いの状況は、今の私の状況に酷似しており、それだけでも衝撃を受ける。その後、父親は大きな病気をして、もっと大変な状況をもたらす。後半では主人公自身も大きな病気となる。
誰もが避け得ない問題を、ロスの、前回の作品同様、苦いユーモアを含む筆致で書き綴る。
尊厳死の問題もでてくる。もちろん、一筋縄ではいかない。
「老い」のことを真面目に考えようとする人には、おすすめだが、安易な気持ちで読むと危険かもしれない。落ち込んでしまう可能性がある。
ともかく、フィリップ・ロスの筆力は只者ではない。柴田さんの訳文もすばらしく読みやすい。
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