2020年7月8日水曜日

(紙の)本の良さは本文だけにあるのではない

古い文庫本を読んでいて、面白いのは、巻末で宣伝用に紹介されている本。その本が出版されたと同時期に、どのような本が読まれていたのかがわかる。もちろん、関連した本も紹介されているので、興味をひくものがどちらにせよ必ずと言っていいほど、ある。
この頃、読んでいるサガンの『私自身のための優しい回想』(新潮文庫)の場合は……1986年に単行本として出て、1995年に文庫本になった。平成7年。

最新刊(文庫)紹介のなかに、『アメリア・イヤハート最後の飛行』という本があった。ブリンク著、平田敬訳。「行方不明となった、女性パイロットに与えられていた秘密任務とは……」とある。アメリアのことは、リンドバーグ夫妻のことを調べた時に気になっていた。面白そうなので、図書館にないか調べてみた。あった。『アメリア・イヤハート最後の飛行 世界一周に隠されたスパイ計画 新潮文庫』という、ネタバレの題名になっていた。「246p 図版8枚」らしい。ここまで書誌を読んで、予約ボタンを押した。
かなり楽しみだ。



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その後、『現代装幀』(臼田捷治 2003年 美学出版)に目を通す。装幀に関する知識量を増やす目的で借りたので、面白そうなところを捜しながら、飛ばし読みした。目を引いた事柄は以下。

23頁。
栃折久美子が退社した後、筑摩書房で装幀を手掛けたのは中島かほる。栃折さんの筑摩での師匠格は詩人装丁家の吉岡実。遠い師匠は室生犀星や萩原朔太郎。かれらは自著を自分で装幀したがった。

25頁。
1960年代なかば以降。「ブックデザイン」の時代となる。杉浦康平、栗津潔、勝井三雄、平野甲賀、清原悦志などが台頭。

53頁。
『数学セミナー』(日本評論新社)の幾何学的だが温かいデザインは杉浦康平の作品だった。

69頁。
『季刊銀花』(文化出版局)の表紙も杉浦康平デザイン。本屋で平積みされていると目を引いた。

90頁。
平野甲賀は晶文社の本を多数デザイン。日常的に目にしていた。書き文字使用がユニーク。

106頁。
『高丘親王航海記』(文藝春秋)の想定は菊地信義。1987年。

136頁。
このあたりから、タイポグラフィの話になる。
諸橋『大漢和辞典』の写植文字4万8千字の作成を指導したのは石井茂吉だという。1952年から1960年。

143頁。
『暮しの手帖』をデザインしたのは、花森安治。見識と品格をそなえ、読みやすくもある。

207頁。
1987年の超ベストセラー『ノルウェイの森』(講談社)の鮮やかな装幀は著者の村上春樹ご本人。装幀の力もベストセラー化の力になったのだとか。
夏目漱石を意識したかも……しれない。

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