2020年12月7日月曜日

苦労して手に入れたのに新居は住みにくいと、トーマス・マンは日記に不満をぶちまける

『トーマス・マン日記 1953-1955』を読みはじめる。


最後の日々の日記の編者インゲ・イェンスの序文は感動的。そして実に多くの人々がこの本の完成のために努力したかもわかる。

1953年1月1日、エルレンバハ。
夜中12時教会の鐘の音に聴き入る。耳と脚のかゆみをセコナールでおさえ、朝8時まで熟睡。コーヒー、入浴。朝食に蜂蜜。短編小説『欺かれた女』を書き進める。Kと子供たち(# 孫だろう)と新車フィアットに試乗。散歩。手紙のロ述。自分についての評論草稿を読む。

(# 年のはじめにあたり、新居でできるだけ従来の典型的な生活をやってみようと努力しているように思える。)

1月8日。
ヘッセから献辞付きで『全詩集』全6巻が送られて来た。すぐ礼状を出す。自室の窓に臙脂色のカーテンを取り付ける。一つの進歩。

1月12日。
散策のとき、フリードの腕にすがる。すがれるほど十分に大きくなったのだ。(# そしてすがるほど老いたマン。)

1月13日。
ひじょうに長いあいだ手提げファイルのなかで運び回された『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』資料を、新しい図書室の抽斗に保管。まもなくまた自分の書物机の抽斗に収まるだろう。

1月15日、チューリヒ、ヴァルトハウス。
昨日、アメリカからの家具の引越し騒ぎの新居を避けてホテルの大きな部屋へ移動。食堂では初めて赤いド・ヌールの綬を佩用。

Kが戻って部屋の高さ(2.5メートル)が足りずに書棚(高さ3メートル)が書斎に入らないと報告、怒り心頭。家のセールスマンは3メートルあると請け合っていたらしい。

1月16日。
昨日の怒りで安眠できなかった。

1月20日。
ホテルから新居へ戻る。

1月21日。
昨日の夕方は、
書物机の包装を解くすばらしい労働。極度に疲労。損傷を悲しむ。

カリフォルニアのベッドでくさび形マットを枕に眠る。

きょうの午前中にやっと書物机を整頓し、机上の風景はそっくりそのままに再現された。原稿、『高等詐欺師』の資料などをしまいこむ。

カリフォルニアの家の住みやすさが懐かしい。

1月26日。
午前零時半から7時45分までぶっとおし眠る。(# すごい!)

1月28日。
新たに誂えた寝室の書棚は満杯。

1月31日。
このところ猛吹雪。隙間風がひどい。

先に、巻末の訳者あとがきを読んで見る。1953年の1月の日記で上記のように新居に対して不満をぶちまけたマンは、翌年また引っ越しをするらしい。ご苦労なことだし、それが命を縮めたのではないかと気がかりなので、それにも注意して読み進めたい。

***

一昨日ファイルのローカルなバックアップを失った。音楽ファイル(旧iTunesで読み込んでいたCDデータ)は、ひと世代前のハードディスクを探ったらかなりの部分が出てきた。やはり、HDのほうがUSBより安全なのかしら。自治会以外の書類はやはりHDにもない。あきらめの心境。なにかあれば一から作る、と割り切る。

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