反町茂雄の『一古書肆の思い出 1』を、238ページまで読み進めました。珍しい東大出の古書店員として当時の「一誠堂」に入った反町茂雄は、数年で書店主が認める存在となりました。そこには子供の頃からの豊富な読書体験が大きな役割を果たしていたらしいです。「東京古書会館」で行われた古書のセリの模様の描写には興味深いものがあります。販売に関しては、「目録」を充実させて、それを持って大学図書館など、大口の注文の取れる顧客のもとに出かけていく積極セールスをはじめました。大震災後の図書不足により需要が多かったのは幸運だったらしい。販売が好調になると、仕入れが問題となってくるが、新聞に大広告を出して、こちらも積極的に大口の仕入先を開拓するなど、とても野心的だったようです。
いわゆる古本や、洋古書などは、反町茂雄個人の過去の読書体験を生かして販売・仕入れを行えたが、和書の古書に関しては、経験が不足しており、仕入れ・セリ・販売に支障をきたすことがわかったようです。それを実務経験でどう解決していくかというのが、230ページ以降の読みどころでしょう。経験の深い他の先輩古書店主や、専門学者に教えを請う、というのが解決策の手がかりとなったようです。
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ともかく、偶然に「虔十書林」さんの均一棚で見つけたこの本は、鹿島茂さんや荒俣宏さんが最近の公開対談でおっしゃっていた通り、とても示唆に富むものでした。良い買い物でした。
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