2016年11月24日木曜日

読書のやり方に光をあて、改善するのはお年寄りの仕事

全集本の一部。これを読むのは楽しみです。

寺田寅彦全集は1960年ころ、岩波書店からでた四六版十七巻クロース装版を持っている。非常に瀟洒な造りで、読むときに手に取る楽しみもある。寺田先生のエレガントな文章にピッタリの造本といえる。随筆は400くらい掲載され、他に日記(抜粋)や手紙や雑纂も収められている。普通に楽しむには十分な内容。

 青空文庫ではかなり(三百点くらい)の寺田寅彦の文章が電子化されている。それを個別にダウンロードして読んでも良い。「寺田寅彦全集」と称してこれらの電子テキストをまとめたものも何種かある。Kindle版もあるが、安いけれど有償。編集料ということか。目次が本文最初にあり、それから各文章に飛べるようになっている。目次は50音順。安易。Kindleの目次機能をなんで使わないのかわからない。

 出処はおなじだろうが、「寺田寅彦全集」はiBooksでも読める。こちらは無料である。内容はほとんどKindle版と同じ。これは目次はきちんとしている。ただし作品掲載の順序は不明。大雑把には年代順?ハイライト機能やしおり、メモ機能などはKindle版と大差ない。

 寺田寅彦の電子版全集としては、iBooks版に軍配が上がる。ただし、掲載順については改善の余地あり、ただだからいいでしょうと言われそうだが、それはちがう。

 どうすればもっと読みやすいのか朝風呂に入って考えた。目次と作品の配列がフレキシブルであって欲しい。つまり読者の好きな序に読めるようにして欲しい。いまのプラットフォームの上でもこれは簡単にできそうだ。電子図書の編集料をとるならこのあたりを充実させて欲しい。多少高くなっても払います(^O^)

 風呂であたたまりながらもっと考えた。書棚の整理は読書家にとって永遠の課題だ。本の配列も固定化されていてはだめで、読者の状況によって自由に配列が変わるのが望ましい。物理的本棚でも多少は行えるが、多数の本を入れ替えるのは肉体的に辛くなってきた。

 電子本ならここは自由自在にできる、はずである。しかし、まだ未開拓の分野なので、実際にはうまく出来ていない。Amazonのオススメ機能はほんの少しこの理想へ近づいたといえるだろう。ここはAIの助けが必要だし、従来の司書やそれ以上に読書のエキスパートのノウハウを活用したシステムを創るべき場所と思う。個人の嗜好や状況は時々刻々かわるので対応できるシステムにする必要がある。
 
 松岡正剛先生の『知の編集工学』という本がある。文明とは編集であるという、大風呂敷を拡げている本。松岡先生の活動の原点みたいな本。

 読者の立場からすると、どのように読書を進めるかのノウハウも編集技術の範疇に入ってくる。この読書のノウハウは経験を積んだ老人でないとうまく発揮できないし、発揮の仕方を社会に還元するべきと思います。

 夢中で力任せに読む若者のやりかたではなく、抑制されたやりかたで、読書を粛々とすすめる。そのためには経験から来るノウハウとそのノウハウを助けるツールの活用が大切になる。

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