2017年8月26日土曜日

「フランドルの冬」へ「心の旅」を

 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を本棚から取り出したら、偶然に「フランドルの冬」(加賀乙彦 1967年 筑摩書房)が出てきた。こういう偶然には「あたり」が多い。



 46年ぶりに読んでみた。出版は1967年だが、買って読んだのは1971年と本にメモしてあった。ほこりと黴でページが少しざらざらしている。

 主人公の精神科医師は加賀乙彦の分身。留学に向かうとき「カンボージュ号」で欧州へ向かう。加賀乙彦は辻邦生と違い、公式な留学生だ。

 当時の鬱屈した状況が小説世界にも反映しているようだ。このあとの五月革命を、加賀乙彦は経験しなかったのか。辻邦生のように経験したほうが、文学的には良かったのかもしれない。

 本のメモには読了日が1971年7月15日と書いてある。この本を再発見したとき、冬の夜汽車で吹雪の光景を窓から見ながら読んでいた記憶があるのだが?

 記憶はあてにならない。

 午後は、記憶つながりで発見した映画「心の旅」(Regarding Henry 1971年 米国 マイク・ニコルズ監督)を観る。

 なかなかの佳品。敏腕弁護士(ハリソン・フォード)が、拳銃で撃たれ記憶を失う。リハビリをして徐々に良くなるが、「敏腕弁護士」ではなく、良い人になっていく。家族の絆も取り戻すのでなく、新しく作り直す。

 記憶はなくなったほうが良いことも有る。しかし世間の記憶は簡単にはそれを許さない。

 記憶の社会的側面をうまく描写した映画だ。さすがはマイク・ニコルズ。

***

 記憶つながりで、アイリッシュの「黒いカーテン」を畏友に紹介された。それをAmazonで検索していたら、誰かの書評に…
   『宇宙気流』アシモフ、
   『非Aの世界』ヴァン・ヴォークト、
   『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック
が紹介されていた。

 SNSで少し情報を流すと、それに応じて多くの情報が集まる。

 これも社会的記憶?

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