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サガンが『私自身のための優しい回想』のなかの「愛読書」で、16歳のとき浜辺で『イリュミナシオン』を読んで衝撃を受けたことが書いてある。
文学と……言葉とつかみ合いをする以外は。彼女(ぶんがく)と一緒に走り、彼女の方へ自分を高めなければならない。
金子光晴や小林秀雄の訳した『ランボー詩集』や『地獄の季節』をひもといてみても、若いサガンの受けた感動はうかがい知ることはできない。当たり前だが。
それでは、と辻邦生さんの『辻邦生作品 全六巻 3』(河出書房新社)をあけて、『献身』を読んで見る。病に倒れたランボーと最後を看取った妹との独白で書かれた緊迫感あふれる短編。これから読み取れるランボーの生への強烈な意欲。克己心。凶暴なまでの自己実現は、サガンの生き方にかなり影響を与えたと思える。大金を手に入れるが、結局失敗して借金を抱えて死ぬところも似通っている。「生きる」ためには才能も金も使い切る必要があった。
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