2021年12月16日木曜日

『犬が星見た-ロシア旅行』の「二人読書会」で改めて書評の奥深さに気づく


ALL REVIEWSに新しく加えられた記事は『新版-犬が星見た-ロシア旅行』(中央公論新社)の中野翠さんの書評だった。アドレスは以下に。

https://allreviews.jp/review/4432

武田百合子のこの本は今年正月に「ゆっくり」読んだので、「二人読書会」を勝手に急遽開催してみた。

まず、本年正月に読んだとき私がブログに書いた感想。

https://hfukuchi.blogspot.com/2021/01/blog-post_4.html

武田百合子の『犬が星見た ロシア旅行』(中公文庫)をようやく読み終わった。12月25日に借り出したので、足掛け10日かかった。最近読書スピードが落ちていたので妙に読むのが遅かったのかと思ったが、実はこれは本来ゆっくり読むべき文章だと思い直した。即物的でわかりやすい記述なのだが、ななめ読みができない。文章がいやおうなくじわじわと頭に侵入してくる。不思議な力をもった紀行日記だ。昭和44年のソビエト旅行の様子がありありと描写され、もういまさらロシアには行かなくても良さそうな気がしてきた。もちろん、機会があったら行きたいが、この本に描かれた体験以上の体験はできないだろう。その意味では罪作りな本である。ともかく感服、脱帽。

中野翠さんの書評のなかの見事な一節はこうだ。

もし日記の神様というものがいるとしたら、武田百合子は生まれた時から神様に選ばれていたかのように、日記文学の才能を発揮してしまったのだった。

鋭敏な観察眼と人物描写の妙、闊達な書きっぷりには、まったくほれぼれとしてしまう。

「日記文学」のなかでの、武田百合子の日記何冊かの位置付けへの深い考察が、中野翠さんの書評の裏にある。ここはなかなか真似できない。「書評」に関しての議論をするにはこのような事を避けて通れない。丸谷才一は「芸」とか「構え」と言っているのだが、この境地に達するには無数の読書の裏付けが必要だ。時間ももちろん必要。これに改めて気づくことが出来て、本日の「二人読書会」は大成功。

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内藤濯『星の王子 パリ日記』(グラフ社)を読みすすめる。

109頁〜110頁。
妻への書簡にこの時期(1923年2月?)の日課が以下の趣旨で書いてある。スバラシイ。


朝は大抵9時から10時までのうちに起きる

コーヒーとパンとの朝食を部屋でとり、文芸新聞と普通の新聞に目を通す

11時から12時40分、仏蘭西人の先生と本を読み話をする

午後は年末に訪日する仏蘭西人と交換教授2時間、または読書か本屋あさり

夜は週に2度か3度芝居を観る、またはラシーヌの『ブリタニキュス』の翻訳を山田珠樹と1日1ページ行い翌日老教授に見てもらう


(この『ブリタニキュス』は1949年に岩波文庫から出ているようだ。仏文学者の山田珠樹は森茉莉の最初の夫。)


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昨日友人のHYさんに見せていただいた素晴らしい写真。本人のご許可をもらって掲載する。



 

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