2020年11月20日金曜日

トーマス・マンの作家魂を『日記』から読み取る

朝焼け再び。

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ヨーロッパ旅行。再亡命する悩みながらの落ち着かない気分で、朗読会などをこなす。76歳にして、体調も良くはない。そのなかでも、過去の著作の評判と売れ行きを気にし、今書いている『クルル』の書き方になやみ、将来書きたいテーマについて思いを巡らすという「作家生活」を、ホテルの喧騒のなかで守り続けようとする。これぞ作家魂。

1951年8月2日、ヴォルフガング湖畔シュトローベル「グランド・ホテル」にて
チューリヒから車でミュンヒェンへ。二年前は列車だった。ミュンヒェンは不可思議な夢で、なじみ深く、しかもよそよそしい。昔住んでいて今は醜くなった家を見る。

二日後(?)ビービの家へ。フリード。

8月3日。
よく眠れず、重苦しい夢。胃が悪く、咳も出る。

8月5日。
孫フリードに800シリングで自転車を買い与える。

8月11日。
私を苦しめる最悪のものはクルル回想記への不信。

8月12日、アイゲン。ヴァルトブルク館。
きのう、フリードたちに別れを告げ、ザルツブルグへ。昼食。その後当地へ。

(#ついでにザルツブルグ音楽祭も見物しているようだ。)

8月16日、バートガスタイン、ホテル・カイザーホーフ。
朗読会?

8月17日。
朗読会についての好意的報道。

8月19日。
聖マリア教会記念祭にあたってのリューベック向けの祝賀状。

8月20日、ゲルケ館。
昨日移動。温泉付きの部屋。

8月21日。
入浴は快適。ときおり、『クルル』の仕事を続けようかという気持ちが動く。

8月26日。
フリードがやって来た。

少し仕事。

9月2日。
『クルル』のことを考えると疑念を覚え、心配が先立つ。給仕の章は書き換えなければならない。

9月9日、ルガーノ、ヴィラ・カスタニョーラ。
6日にガスタインを出発。ボーツェン泊。7日、コモ湖、ルガーノへ。ホテル・マジェスティクへ。きのう8日朝、ホテルを移る。

カフカの日記を読む。5時、モンタニョーラのヘッセ邸へ。心温まる再会。

9月12日。
ヘッセ邸へは毎日通った。ヘッセもカフカの日記を読んでいた。

9月13日。
ヘッセに別れを告げる。

9月14日、チューリヒ、ヴァルトハウス・ドルダー。
13日にチューリヒへ移動。ホテルの副支配人は『ヴェニスに死す』を10回読んだと言う。

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自分の日記。

1976年8月14日(土)
『ミッドウェイ』ジャック・スマイト 有楽座 1300円
シェーファーの万年筆(その場でイニシャルを彫ってもらった) 有楽町そごう 7200円
『愛と同じくらい孤独』 サガン 新潮社 850円
『鳶色の襟章』 堀元美 原書房 1600円 数寄屋橋旭屋書店

8月16日(月)
『船の科学』 吉田文二 講談社 560円

8月17日(火)
『大統領の陰謀』 アラン・J・パクラ 丸の内ピカデリー 1300円

8月18日(水)
『大統領の陰謀』 ウッドワード・バーンステイン 立風書房 1000円

8月20日(金)
『カトマンズでLSDを一服』 植草甚一 晶文社 780円
『密航』 佐井好子 テイチク・レコード 2300円

8月21日(土)
『第一種情報処理技術者試験既往問題集』 オーム社 1600円 御茶ノ水巖翠堂書店
『戰艦大和ノ最期』 吉田満 北洋社 1000円 MEikeido

8月22日(日)
『エチオピア絵日記』 岩波書店 280円
『黄金繭の睡り』 徳間書店 650円
『銃弾のシュプール』 徳間書店 200円
『本当のような話』 吉田健一 集英社 980円 吉祥寺弘栄堂書店
『植草甚一の英語百貨店』 主婦と生活社 650円
『海軍技術戦記』 図書出版社 1200円 吉祥寺紀伊國屋書店

8月25日(水)
『世界の船 1976年』 朝日新聞社 1200円

ここで日記用のノートの終わりになった。次の一冊を探す必要がある。

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孫の小児科での初受診結果に一喜一憂する爺バカぶり。情報は正確にかつ配慮を持って伝えて欲しい、と考える老人の情けなさ。

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