『トーマス・マン日記』、1949年-1950年の巻を読み終えた。
1950年11月6日。
「マカーサー」と中国の非難の応酬。
11月8日。
選挙で共和党が勝利。ぞっとするような風が吹いてきた。(アメリカを)立ち去るべきか。
11月9日。
娘エーリカの45歳の誕生日。
11月20日。
シカゴのボルジェーゼから電話、娘メーディと別れたいと。
11月25日。
『選ばれし人』は最終的に完成。
正午にエーリカと計画と構想としての『クルル』について話し合う。素材に含まれるファウストゥス的性格。舞台をアメリカにまで拡大するか。
11月26日。
『詐欺師』の原稿に取り組む。(注)1912年『ヴェニスに死す』を優先するため、第二巻第四章で途絶していた。
11月28日。
『クルル』の原稿に取り組む。
11月30日。
『クルル』の原稿に取り組む。
12月3日。
現実のファシズム革命の可能性。この国を離れるのがいよいよ得策となった。エーリカに準備させたい。
12月5日。
左腰に「リューマチ」の痛み。
12月7日。
昨晩は薬入りの温水浴と電気毛布。ぐっすり眠る。
12月11日。
「ショウ」講演の録音。
12月20日。
『詐欺師』の材料に取り組む。年代史風のもの。
12月24日。
『詐欺師』の原稿と印刷された文章に取り組む。プレゼントは、シューマン歌曲集、『オランダ人』、『ローエングリン』、『こうもり』。
12月25日。
『クルル』の最後の、まだ印刷されていないいくつかの部分を吟味。書き直しが必要。
12月26日。
不思議なことだが40年たってまたようやく『詐欺師』の稿を書きつぐ。すなわち、中断していた第二部、第四章の末尾。徴兵検査の前の部分を書き進める。
12月27日。
原稿、構成変更を手がける。
12月29日。
日本は永久に占領下におかれるとアメリカはロシアに覚書。
最大のものと最小のもの、広く散らばっている銀河の数、分裂した原子核の粒子、これらについて感覚を混乱させるような天文学情報。
(注)1950年12月28日から30日までペンシルバヴァニア州ハヴォフォドで「アメリカ天文学会」が開かれたがその年次総会報告書を読んだのであろう。(?)
マンが読んだのはこれではなく、新聞記事だと思うが、読みやすそうなもの見つけた。
http://articles.adsabs.harvard.edu/pdf/1951PA.....59...57G |
12月30日。
改稿をすすめる。この対象が私を支えているのだろうか。
長編の改稿を進める。
12月31日。
バルコニーの兄弟姉妹を細部まで仕上げた。
1年の回顧。
『オランダ人』、ロッシーニ、セザール・フランクを聴く。でもあまり楽しめない。
*
『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』をまた書き継ぎ始めたところで、1950年が終わった。相変わらずの産みの苦しみとアメリカを離れるべきかの悩みとで、75歳のマンは体調が悪そうだ。
『詐欺師』のファンとしては、次の巻を早く読みたい。世田谷区立図書館に予約を昨日入れたが、今日通知が来た。明日は孫の顔を初めて見るという「大イベント」があるので、ついでに受け取ってくる。内緒だがどちらも猛烈に楽しみだ。
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