書評集の題名には趣向が凝らされているようだ。
鹿島茂さんの『歴史の風 書物の帆』という題名については以前書いた。
この書評集を読んで書いた以上の考察が、私を書評の勉強に駆り立てた。
前回読んだ丸谷才一の『蝶々は誰からの手紙』。蝶は三好達治の詩を思わせ、同じ詩でヨットの帆も連想させる。安西冬衛の詩も少し思い出す。
この書評集の冒頭の「はしがき」に並んだ様々な色のインク瓶のことが出てくるが、これは今回読む『いろんな色のインクで』に呼応する。そして帯の言葉にも「手紙」が登場している。なお、装丁はもちろん和田誠。「はしがき」のインクと筆記具の話も趣き深い。
本文冒頭は……
「I 書評のレッスン」
「藝のない書評は書評ぢゃない」
挑戦的な題名だが、丸谷さんの書評を知っている人にはそうでもなく、内容は丁寧な書評の書き方の手引きになっている。書評ファン必読。
その後の「実例」書評。ふたつ。
「マンゾーニ『いいなづけ』の書評を書き直す」
「カズオ・イシグロ『日の名残り』の書評に書き足す」
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「II 74の書評」
スバラシイ書評満載。いくつも読みたくなる本が紹介される。たとえば、
「ミセス・ブラウンの配色」では『マティス・ストーリーズ 残酷な愛の物語』。
「辺境のキリスト教」では『聖者と学僧の島』。
「文学的伝説」では『失われた世代、パリの日々』。
ここまでしか読んでいないが、まだまだ読みたくなりそうだ。
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「書評集」そのものが読んで楽しいことを再認識させてくれる、古本で安く買ったのだがすごいコストパフォーマンス。
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