2019年10月28日月曜日

ソール・ライターの写真の「差し色」にしびれる

『ソール・ライターのすべて』(2017年 青幻社)、写真集を「読」んだ。




ファッション写真を撮っていた。有名だったが、金の世界に愛想をつかした。
「スタジオだと昼食会ができるから、彼ら(編集者)にとっては快適だったのだ。外で働いていたら昼食会はできないからね。でも私は外で働くのが好きだった。」(30頁)

「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。」(35頁)

「写真を見る人への写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時々提示することだ。」(104頁)
この言葉通り、何気ない場所で何気ない写真を撮るが、それがウェットな美しさを放つ。モノトーンの中の赤い差し色、たとえば赤い傘の色、はしみじみとしてかつ印象的だ。

この本は2017年の展覧会に合わせて作られたが、同じBUNKAMURAで来春に第二回の展覧会がある。また、写真集が出るだろうか。出るとしたらどんな形になるのか。

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『量子の海…』も続けて読んだ。このころ、1925年、「量子力学」という言葉が生まれた。名付け親はボルン。ディラックは「量子力学の基本方程式」なる論文をまとめた。ファウラーはさっそく王立協会に送る。(120頁)
https://royalsocietypublishing.org/doi/pdf/10.1098/rspa.1925.0150

このころ米国からオッペンハイマーがやってきた。(122頁)
大陸ではハイゼンベルグとパウリとボルンとその弟子ヨルダンは協力して研究にとりくむ。英国のディラックは一人で研究を続ける。これが性に合っていた。
1925年ごろの「量子力学」は50名ほどの学者が取り組む「仕掛品」で、完成にはまだ数年かかる。(125頁)

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昨日の朝刊に芦田愛菜さんが書いた文章が紹介されている。我々が本を探すのでなく、本のほうが我々を尋ねてやってくるというもの。私は70年かかってやっとその事に気づいたが、彼女は若くしてこの感想を述べている。おそるべし。


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