2022年2月23日水曜日

メルマガ「週刊ALL REVIEWS」の巻頭言として三中信宏さんの『読書とは何か』の一読後の所感文を書いた

昨日発行されたメルマガ「週刊ALL REVIEWS」の巻頭言執筆は、私の担当だった。

先週の「公約」通り、三中信宏さんの『読書とは何か 知を捕らえる15の技術』(河出新書)の一読後の所感文を書いてみた。この本自体についても、この本に含まれた「知を捕らえる」読み方をするには、私には時間がかかるだろうことを実感した。しかし勇気を持って、今理解したことをアウトプットしてみた。アウトプットすることによって、この後の理解がより早く深く進むことを期待したい。巻頭言は以下の通り。

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三中信宏さんの『読書とは何か』は一般読者を「狩人」(熟練読者)に変化させる(標題)

三中信宏さんの新著『読書とは何か : 知を捕らえる15の技術』(河出新書)を読んだ。著者は、農研機構の専門員であり、東京農業大学の客員教授でもある。進化生物学や生物統計学を専門とする研究者という著者が、このような一般向けの読書の手引を書いたことに少し驚いた。でも本当の専門家は難しいことをやさしく説明する本も書けるという証明になるだろうと、考えなおした。この本は一言でいうと、通常の読書を脱却して、「狩りとしての読書」に到達するための手引書である。積極的な読書によって、読書の「楽しみ」を増やすという意味で一般読者にも有効な読み方のヒントが満載されている。書物の字面を読むだけでなく、執筆時の著者の「構想」も読み取ることが大切で、これは読者がその本を「再執筆」することにも相当する。このように、読書とは得るものが大きく、本来自由自在であるべき行動だ。この行動を著者は「狩り」にたとえたのだと思う。

狩りとしての読書つまり漫然と読むだけではない能動的な読書が、読者の読む楽しみを飛躍的に増やすことになる。これは以前読んだ同著者の『読む・打つ・書く』でも言われていたことだ。前著との違いは、「読む」立場からの記述に徹していることだ。私のような専門書や論文を読むことがあまりない一般読者に向いた本になっている。

第一章は「知のノードとネットワーク」として、「読み方」の基本を教えてくれる。読者は本を読みながら付箋をつけたり書き込みをしたりして、心に響くポイントつまり著者の言う「ノード」を拾い集めていく。これだけで満足していてはいけなくて、拾い集めた「ノード」を頭の中で「ネットワーク」に構成していくべきである。この両方のプロセスのなかで読者は新しくより深い知見や感動を得ていく。これを「狩り」に著者はたとえている。

第二章から第四章までには、読書術の基本・応用・発展の技が著者の経験から抽出してうまく例示されている。第一章で述べられた狩りとしての読書を実行する上でのノウハウがふんだんに紹介されている。これらをすべて実践するのは私のような素人読者には無理なのだが、自分でもやっている技を確認し、知らなかった技があれば(たくさんあったが!)そのうちの気に入ったものを実践してみれば良いと割り切って読んだ。この「割り切り」術も、狩人の技として紹介されている。

かなり「危険」な本なのかも知れない。楽しければ良いとだけ思っていた読書という行為に、狩りにたとえた積極的な意味をもたせようと著者が巧妙に誘ってくる。それ自体は非常に魅力的なのだが、誘いにのると読書の世界という奥深い森で狩りを自分で体験せざるを得ず、下手をするとその森から永遠に戻れないかも知れないのだから。

研究職のかたや文筆業のかたには当たり前かもしれない「深い読書」を、「狩り」というたとえで、私のような普通の読者にも出来るかも知れないと思わせてくれる。この理由でこの本はすべての読書人におすすめだ。新書版かつ安価な本でありながら、この本の索引や文献リストの充実していることに驚いたことを最後に付け加えたい。ここにも読者を「狩り」へと誘う著者の深い「たくらみ」が隠されている。(hiro)

なお、三中信宏さんのご紹介を「著者は、農研機構の専門員であり、東京農業大学の客員教授でもある。」とした。「一般読者」の私には書籍に付けられた紹介文の組織名が難しすぎたので簡略化した。三中信宏さんおよび関係者にはご寛恕を願いたいものだ。ここで言っても詮無きことかもしれないが。

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本日はPASSAGE書店へ行き、自分に割り当ててもらった棚に、好きな「日記」本を並べてきた。これだけでは、お客様へのアピールがたりなさそうなので、手作りの帯を巻く。帯には手書きで、本の惹句を記入したい。今月中に。


明日は書評家さんたちの棚の本の登録作業を手伝いに行くことにした。開店間近でPASSAGE書店運営側は大忙しなので。

作業の合間に、覆麺へ。ラーメンは、あいかわらず至福の味。 



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