「青べか物語」(山本周五郎)は1960年1月から翌1961年1月まで、雑誌「文藝春秋」に連載された。コドモだった私は、生意気にもこれを読んでいた。しかも結構面白いと感じていたのを覚えている。
今年、青空文庫に収録されたので、約60年ぶりに読んでみた。やはり、面白く読めた。
この話は、山本周五郎の作品の中では特異なもののような気がする。たとえば…
(1)会話の記述が一方通行。つまり、語り手の「先生」の発言はその内容が僅かに示唆されるだけで、実際にはほとんど省略され、相手(「浦粕」つまり当時の浦安のヒトビト)のコトバのみが書かれている。それでも会話が成り立っているような上手い書き方がされている。
(2)あっけらかんとした性的な内容がかなり多いが、下品にならないところで踏みとどまり、嫌みがない。
(3)簡単に言うとエスプリ豊かな文章。
これを小学生だった私が読んで面白かったとは…コドモは大人が考えるほどウブでは無いということ。そしてそれ以上に、山本周五郎の類まれな、名人芸的な筆力のおかげだろう。
このような作家の文章のお陰で、本をよむのが好きになったわけで、これはいくら感謝しても感謝しきれないことだ。
現行の我が国の著作権の存続期間(没後50年まで)のキマリのおかげでこうした貴重なそしてあまり流通していない作品が読めるのは、嬉しいことだ。50年が70年になると言われているが、これはなんとしても阻止したい。
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ところで、さすがに「先生」が青べかに寝転んで読んでいた「青巻」は、どんな本なのか分からなかった。今回調べたら(インターネット検索さまさま!)「ストリンドベリーの箴言集」なのだそうだ。
これも読んでみようかしらん。
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昨年末に羽田で撮った写真。雲の下は浦安方向だろう。
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