2022年4月28日木曜日

「生誕110年 吉田健一展 文學の樂しみ」をみてきた

みなとみらい線、元町・中華街駅6番出口のいくつものエスカレーターを登ると、突然「アメリカ山公園」に出る。16年ほど前に神奈川近代文学館に来たときにはこのルートは通らなかった。外人墓地を右手に眺めながら歩き、横浜地方気象台を左折、「港の見える丘公園」に入り、大佛次郎記念館の前の薔薇の咲いた広場を抜け、霧笛橋を渡ると目的地の神奈川近代文学館だ。歩くこと10分。少しずつ昔のことを思い出しながら、「吉田健一展」の会場に入る。以前は階上の会議室での集まりに出席したのだった。


65歳以上は安くて入場料は350円(証明書提示必要)。意外に盛りだくさんの展示品がある。自筆原稿や著作本、写真や、身の回りの品など。目を引き、内容に感銘を受けたのはケンブリッジ時代の指導教官ルカスに書き送った数々の書簡だ。一回り半しか年齢が離れていないルカスは吉田健一にとって先生というより話の合う先輩という感じだったのだろう。日本への帰途にも、日本に帰ってからも文学上の話だけでなく、細々とした悩みごとまで相談している。吉田健一が芸術と人生に専心する後押しをしたのはルカスだった。

自分もすでに年老いてはいるが、あらためて、好きな読書の世界を深堀りする努力をたゆまず続けていきたいと、思った。そのためには、効率だけを考えるのでなく、「ゆっくりと」シゴトをし続ける必要があるだろう。

このルカスへの書簡は(できればルカスからの返信も)まとめて読んでみたくなった。読む方策を講じてみたい。

著作の本は年代ごとに他の展示品に混じって並んでいたが、1960年代後半ごろから1970年代後半までの何冊かは、私の持っている単行本と同じ種類のものがあり、これを見ると懐かしさがこみ上げてくる。これらは今でも折りに触れ手にとって読むことがある。『書架記』は、文庫本で読んでいたが、その栃折久美子装丁・オリジナル版は最近神保町に通うようになってから手に入れた。

途中で体調が悪くなったので、後半・「翻訳」の展示はほぼ素通りした。出口で「図録」を900円で購入。これで展示内容をもっと把握して、また来月に「吉田健一展」に行ってみたい。


近代的・効率的な造りのみなとみらい線と横浜駅構内を通り、帰宅。午後1時40分。 

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