『蝶々は誰からの手紙』の冒頭を読んだ。丸谷才一の書評論は、日本の書評を語る上で絶対に避けて通れない。「良くも悪くも」丸谷才一は書評の帝王で、書評の地位を高めた功労者。書評は文化の批評として大切なものという認識を深めさせてくれる。
少し引用する。30頁〜31頁。毎日新聞の「今週の本棚」に関する和田誠との対談。
「高価な学術書を買って読むのは大変だけど、評者のダイジェストした五枚を読むのは楽ですよ」
「書評はいわゆる読書人はもちろん読むべきものです。でも読書人でない人はもっと読むべきものだ」
そこで和田誠の言っているように、読んで面白い書評ということがあるわけだ。
36頁。
「新刊の良書に一通り目を通すことは不可能だろうが、書評をある程度読むことはむずかしくないし、それは時間の上手な使い方かもしれない。」
44頁。歴史的なことの記述。
「「週刊朝日」の書評ページ「週刊図書館」は1951年」(昭和26年)2月にはじまったのだから、まもなく42年目を迎へようとしてゐる。……扇谷正造はいはば日本の書評文化の創始者であった。……「文藝春秋」は……1977年(昭和52年)、半藤一利編集長のときに「鼎談書評」をはじめた」
「代表的な書評者は……」(たくさんあるので今日は略す)
45頁。
「週刊朝日」の書評欄の代表作を選んだ『週刊図書館40年』3巻があるそうだ。日本文化の縮図となっているそうだ。調べたらこれは近所の図書館で借りられるので予約しておきたい。
47頁〜48頁。
「戦後日本の書評文化は二人のジャーナリストによつて作られた……「週刊朝日」の扇谷正造と毎日新聞の斎藤明です。」
この直後にイギリスの書評の歴史の記述もある。そしてその水準の高さについても。
51頁。
「「週刊朝日」はイギリスの書評を目ざしてゐる、……「週刊図書館」草創期の筆者は、浦松佐美太郎、河盛好蔵、坂西志保、中島健蔵、中野好夫、など」
44頁の書評家とともに、これらの書評家についてもこのブログのどこかに業績をまとめておきたい。特に彼らの『書評集』について。
55頁。
「扇谷編集長は「週刊朝日」の読者を想定するのに、「高等女学校卒プラス十年の人生経験」といふのを考えてゐた……おもしろくて役に立つ。たとへば鹿島茂による『医心方』「房内編」(筑摩書房)といふ平安期のセックスの教科書の書評、すごい反響でしたよ。」
まだ、先は長いのだが、どこを読んでも勉強になりそうな本だ。買ってよかった。
***
ARの巻頭言チームのなかの会話で、ミチコ・カクタニさんの話が出た。この方のことも知りたい。たとえば、ここを読んでみよう。
https://archive.nytimes.com/www.nytimes.com/library/national/041498kakutani.html
0 件のコメント:
コメントを投稿