2020年3月2日月曜日

論語対談のレポート書き直し中(まだ30%)



対談で聞いて、「!」と思ったのは、孔子は弟子に「考えろ」と教えたということ。知識を得るだけではだめで、その知識の本質を考え抜かなくてはならないのであると。これは、我々の年代(団塊の世代)の物理学系の学生のアイドルだったファインマン先生の言葉に通じる。問題の解決を学ぶのでなく、問題を見つけるほうが重要だという言葉。

最初の部分を見ながら、ビデオをも観て、意味の通らないところを修正した。ただし、メモの流れを崩さないように、部分的に直す。直しすぎると臨場感がなくなって読みにくくもなり、伝わるものが少なくなる…ような気がするだ。

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16時開始。
鹿島:出口さんは『哲学と宗教全史』( https://allreviews.jp/isbn/4478101876 )や、『人類5000年史』( https://allreviews.jp/isbn/4480069917 )など「通史」にチャレンジされている。日本では珍しい。私はフランスの通史を訳した。出口さんに書評していただいた。(『フランス史』(講談社) https://allreviews.jp/review/3256 )
私は少し前に澁澤榮一の伝記を書いた。( https://allreviews.jp/review/3104 )その時、澁澤榮一自身が書いた論語の注釈本も読んだ。(筆者注 『論語講義』でしょうか。)

渋沢がいかに論語を読んだか。それをいかに事業展開に生かしたか。それを話す前に…論語をとりあげたきっかけを述べてみる…
例えばバルザックの理解には当時の社会や歴史の研究が必要だ。歴史家があつかっていないところ、たとえばサン・シモン主義(20年代後半から30年代にはやった。)が重要。ユゴーの『レ・ミゼラブル』もそうだし、バルザックもそうだ。ナポレオン三世の第二帝政もそうだ。(出口さんは大きくうなずいている。)サン・シモン主義はモノ・ヒト・アイディアの3つが循環して利益を生み出すとする。フランス人はメンタリティに平等が入っているので、競争を嫌う。ロシアもそうだ。アングロサクソンは競争一本槍。当時、澁澤栄一は欧州に行きサン・シモン主義を取り入れたかもしれない。しかしそれだけでなく、一方で論語のエートス(倫理観)も取り入れた。この二つで出来たのが澁澤榮一の日本的資本主義である。

ふたつめのきっかけ、最近凝っている、「家族人類学」のキーポイントは直系(父―子―孫三世代が同居する)家族類型だ。エマニュエル・トッドによると発達の一定時期に成立する。論語も直系家族を基にしている。そもそも中国は共同体社会で思想は平等である。ここから共産主義が生まれる、強い独裁者がいて下が平等でないと成立しない。ここがトッド理論のサワリ。その中で、直系家族の哲学である論語の時代はBC500年、ユダヤ民族を除けば非常に古い。この事を世界史の文脈で考えてみたい。

出口:私は「保険屋」なので素人の観点で申し上げたい。

ナポレオン三世はたしかに面白い。『世界史の10人』( https://allreviews.jp/isbn/4167911469 )で取り上げた。第二帝政では社会主義であり労働者階級を大事にするというサン・シモン主義と皇帝制とが共存していた。フランスの為政者には珍しく、英国と仲が良かった。第二帝政は王制とも共和制とも言えない。私はパリが好きだが、「今の良きパリ」はほとんど第二帝政でできた。トッドも好きだ。彼によると日本は男女差別による少子化をなんとかしないといけない。差別の原因の一つは長子単独相続制。職業も固定化し、社会の流動性はない。これは一般にはヨーロッパの特徴でもある。
これに対しては中国は不思議に社会流動性が高い。相続が均等に分かれていく。財産が細切れになるので、流動性が高くなる。中国を考える上で大切なものは、漢字と紙と始皇帝という天才。中国の特性は封建制がなかったこと。始皇帝の統一によって一君万民の中央集権社会ができた。官僚が紙に書かれた文字で広い中国社会を統治している。文書行政の「一君万民」の社会であり、中間に「やさしい殿様」はいなかった。中国では上に政策があり下には対策がある。市民は互いの人間関係を使って自分で自分の身を守る。わかりやすいのは「秘密結社」。

そのような社会で諸子百家、ここでは孔子のような人がどうして現れたのか。孔子の時代(知の爆発の時代)にはプラトンもアリストテレスもブッダも現れた。天才の現れる時期だった。なぜか。地球温暖化と鉄器の普及で農業がうまく行きだした。余剰生産物を使って威信財交易もはじまった。社会の余裕のおかげで勉強する人が現れた。威信を表すものは例えば周では玉器や青銅器だった。後に周が滅びてそれら青銅器の文字を読み書きできるようなインテリ職人が他の地方に分散した。こうして中華思想の走りをインテリが地方に伝える、漢字の魔力である。インテリは各国で宮仕えするが、宮仕えが嫌な人は浪人する。それが諸子百家となる。
(続く。)

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