2020年3月4日水曜日

「別れと出会いの季節に贈りたい本」=『パリの手記』の原稿の準備

「別れと出会いの季節に贈りたい本」=『パリの手記』の原稿のための材料として、辻佐保子さんの
『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』(中公文庫)と
『辻邦生のために』(中公文庫)に目を通す。


https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000011219373-00


https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I023194555-00


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『…暮らして』

24頁。昼間は図書館での読書かドイツ語と日本語の交換授業、夜はウルム街のシネマテーク、日曜日は美術館か近郊の散策といった規則的な暮らし…。

25頁。言語の構造を自分なりの方法で分析、解明するのが好きなのは、たしかに〈文学〉の根拠探索にも繋がっていた。

32頁。基礎的な理論の構築を終えるまでは小説を書き始められなかった…。

159頁。『小説への序章』(河出書房、中公文庫)の源となった模索を続けていた最初の留学時代、森先生は文字通り辻邦生の思索生活の導き手であった。

179頁。もっとも本質的な意味で創作の原動力になったのは、最初の留学時代の列車の〈旅〉だった。

『…のために』
124頁。私たちのパリ留学時代には、東欧からの亡命者など、語学に堪能な人たちと国立図書館の読書室でよく隣りあうことがあった。そうした常連の中には、何語か分からない誰かの詩集を、罫線から文字の配列までそっくりに、毎日数ページずつ丁寧に写している人もいたし、漢文(中国語)の書物を、一字、一字写しながら、私たちが何げなく書いている文字をため息まじりに覗く老教授もいた。

タイプライターの話。

135頁。「タネ帳」…小さな手帳…

147頁。書評をする方がたにお願いしたいのは、本のつくり、装幀その他の点について、一言でも言及して頂きたいということである。…書斎の…品位。

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日記の書き出しの比較。『パリの時』はファーストクラスのエールフランスの旅立ち。『パリの手記』はカンボージュ号の船底部屋。『モンマルトル日記』は突然本文。パリ滞在の日常化を物語る。

『パリの時』のあとがきでは、エトランゼでなくパリで働こうとする意志を述べる。生活を組織化する意志のコントロール。


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「論語対談」書き直し。これで最後。


17時。

鹿島:確かに孔子とプラトンは似ていますね。ギリシャが急に勃興したのは都市国家ではあったが、直系家族的なところがあって、知識の受け渡しが出来たからと言われている。

中国史をやってみると孔子の論語は中国と全然関係ないではないか、真逆ではないのかという気になる。

出口:孔子の言っていることは立派。立派すぎて毎日言われると嫌になる。中国の面白いところは諸子百家という豊富なヴァリエーションがあること。マジメな儒家よりも、皮肉で自由な老荘思想のほうがインテリには好かれる。

流動化する庶民の世界は互いに助け合う、任侠団体の助けなどで、実利的に生きる。

役人はクールに法家思想でいく。一方、人民は助け合いで対抗する。このようにいろいろな選択肢があることで、中国社会は安定して存続してきた。永久平和の世界連邦はいまやディストピアと思われている。諸子百家はその逆を行ったものだった。いろいろな人がいることが中国社会の強みだった。

鹿島:そうですね、1対1では中国人は日本人に勝つ。10対10なら日本人が強い。なぜなら中国人は「諸子百家」だから。リレーのような団体競技なら日本人が強い。
共立で30年、明治で12年教師をやったが、共立は直系家族大学で、ルールがあまりなく運営がファジー。たとえば教授と事務の間に副手がいてうまく問題を調整する。明治は巨大で、副手はいない。教師と事務は直接交渉する。法家思想で統治される。なんでもルール化され文書化してある。始皇帝の中央集権制に似ている。

日本で直系家族が生き残ったのは、規模が小さかったから。中国は中央集権で、共同体家族だった。族長のもとでは多数の核家族があって、それらは平等だった。平等ということは財産平等で、遺産は全部平等に分ける。農地でなく羊や牛馬は分けやすい。

フランスでは数え方は60進法。これは遊牧民の数え方で、この数え方なら財産も分割しやすい。遊牧民は平等であり、牛や羊は分割して相続しやすい。英国も似たような12進法。直系家族と共同体家族の接点がどこかにあった。始皇帝は遊牧民だのなかに直系家族の父親が入り込んで生まれたかもしれない。

出口:四大文明は独自に発生したのでなく、メソポタミア文明が徐々にエジプトやインダスや中国文明に伝播した。たとえば、商や周の戦争では戦車(チャリオット)が使われた。宦官制度も。岩波の『シリーズ中国史』で読める。今5分冊のうち2冊めまで出ている。中国は草原文化と海域文化の出会いで生まれた。

鹿島:最初の話題で、いま、女性進出が日本では遅れているが、一旦始まると早くなる。なぜなら、日本は世界では最も辺境。辺境の社会は男女平等。卑弥呼のいた日本は実は双系制家族で、少し女性に傾いていた。それが基底にあるので。

出口:明治期に国民国家をつくろうとした。天皇制をそのツールとしようとした。その儀式のロジックに家父長制を基本としている朱子学を使った。そして、戦後の製造業の工場で男性の長時間労働を推進するために男尊女卑の社会が作られた。その結果少子化現象が起きている。

鹿島:男性社会で子供など生みたくないという女性の拒否反応が起きている。ただし、辺境社会なので、変わるとすると早いだろう。

司会:そろそろ時間です。

質問:澁澤栄一の論語解釈の分析をお願いします。

回答:鹿島:暴利を貪らない金儲けは正しい。二松学舎の三島中州について、論語を読み直し、ギブとテークの釣り合いをとれば良いと考えた。サン・シモンの社会民主主義に通じる。英米型の暴利を貪ってもいい資本主義とはちがう。

出口:ルターが聖書に立ち戻ったように、澁澤栄一は朱子学ではなく原点である論語の理想そのものに立ち戻った。(ここまで)

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月刊ALL REVIEWSの島津有理子さん出演回を生中継で観た。後半だけだが、おもしろかった。彼女は神谷美恵子さんを目標にしておられるようだ。素晴らしい。

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