2020年1月31日金曜日

『雲』(東京創元社)に関する対談の私的メモ(非公式)ー#1



昨日の月刊ALL REVIEWS対談での私的なメモを転載してみる。文責はもちろん私に有る。

***1/3(作品と著者の紹介)

(1)マコーマックと『雲』の主人公の経歴は似ている。(スコットランドからカナダへ。)―豊崎さん
1989年の『パラダイス・モーテル』発表は「事件」だった。ワクワクハラハラから最後は疑問がとぐろを巻く…ウロボロス的作品。―豊崎。#すると『雲』も似ているな。―私
京極夏彦やナボコフやカルヴィーノにも似ている。―豊崎
『パラダイス・モーテル』の翻訳後、『隠し部屋を査察して』が訳された。書かれた順序とは逆。訳者増田まもるさん。―豊崎
書きぶりは「雑」。けなしているわけではない。―豊崎

(2)細かいところを気にしてない。彼は「悪夢」を書こうとしているが、悪夢は「雑」。ビザールなイメージが繰り返して出てくる。2011年に『ミステリウム』を書いたが、動機なき世界を描く。それは素晴らしい。パソコンでミステリーを書く現在の作家はこのいい意味の「雑」に徹しきれない。「謎」は謎として残すのが良い。―牧さん
現実とはそんなものですからね。―豊崎
レムの因果律。哲学的メタミステリーと対照的。―牧
直感的である。―豊崎

(3)小説のめざすところは「印象」。このほうがプロットなどより読者に長く残る。―牧 人生もそうだ。

(4)ジュリアン・バーンズ『****』。これは年寄りには危険。―豊崎。#???『人生の段階 』かしら?

(30分経過)

***2/3(『雲』について語る)

(1)メキシコの古本屋で見つけた『黒曜石雲』という題名の本が話しのきっかけ。ダンケアンという地名が出てくる。主人公の故郷に近く、ミリアムとの強烈な思いでのある町。この本を調べるよう頼んだ学芸員からの一連の手紙と、主人公の来し方が交互に記述される。スコットランドから船でアフリカへそして南米の採鉱会社へそいてカナダのポンプ会社の社長にみこまれてその娘アリシアの婿になる。コンデンス・ノベル(?)。―豊崎
ここで牧さんのマイクが落ちる。閑話休題。

(2)「シャープ」な小説と違い、「豊かな」小説である『雲』は好きだ。―牧
不可思議が不可思議を呼ぶので、(プロットの)辻褄はあわない。―豊崎
「鏡像」のイメージが骨組みになっている。雲はダンケアンの鏡像であり、ハリー(主人公)の運命の鏡像でもある。―牧
マコーマックの好きな「ガジェット」が詰め込まれている。ブンダーカンマー(驚異の部屋)に。個々のエピソードが面白い。―豊崎
ボルヘス的イメージ。
凡庸なハリーが特異な人々やモノをひきよせる。たとえばデュポン医師は良い人のふりをして近づいてくるが、あとの方では悪い人間。善悪の彼岸にいる人々が出てくる。―牧
『パラダイス・モーテル』もそうだ。―豊崎
「真偽」のモチーフや「婚外子」のモチーフも多用される。―牧

1時間経過。

***3/3(柴田元幸さん突然登場、その後の鼎談)

ここからがもっと面白くなるが、疲れたので、メモの転載はここまで。続きはまた明日(*^^*)

ちなみに、今日の昭和酒場研究会のあと、下り電車で寝込んでしまい、気がついたら上り電車に乗っていた。1時間くらい熟睡していたらしい。終点駅ではマスク姿の私が怖くて誰も触れなかったのだろう。

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