2011年2月5日土曜日

「詐欺師フェーリクス・クルルの告白」執筆にもペルソナ手法が用いられていた

 「詐欺師フェーリクス・クルルの告白」の成立という三枝圭作先生の論文を読むことができました。ここです。
 クックック教授やその夫人の描写のために資料としてショーペンハウエルやアンナ・パブロワの写真などを保管していたと言うことです。他の資料やメモなどとともに「詐欺師」用ファイルを、亡命生活中も大切に持ち歩いたのでしょう。
 執筆は何回も中断されて断続的に数十年にわたり続いたようですが、物語の世界に戻るためにはペルソナ手法が重要な役割を果たしたと思われます。このイメージ入りの資料ファイル作成管理はライティング・パターンにもなります。
 以下はペルソナとも三枝先生の論文ともはなれますが、教授からクルルが、パリからリスボン行の寝台列車の食堂車中で受ける臨時の「講義」は、「魔の山」の有名な講義とともに、面白くて読むのをやめられなくなります。生物学に関するあたりはよく分かりませんが、天文学に関する部分は、当時の最新の知識が反映されており、トーマス・マンがいかに知識習得に貪欲であったかを示しています。執筆時期と天文学上の発見発表(たとえばハッブル)の時期を調べて、エッセイにしたいと思います。もう2月ですが、今年の初夢妄想は未完に終わった「詐欺師」の続編を書きたい...ということなんですが、10年くらいかけてものにならないかな。トーマス・マンは40年くらいかけているのですが、実働はもっと少ないだろう。