2022年2月28日月曜日

PASSAGE by ALL REVIEWS書店の開店準備は大詰め・鹿島茂さんの記念講演も現地から行われた

PASSAGE by ALL REVIEWS、書店の準備はなんとか進み、明後日(3月1日)の開店はを無事に迎えることができそうになってきた。

今日(2月27日)の21時から、まだ準備中の店内から鹿島茂さんが現地レポ(書棚紹介)やPASSAGE開店の辞を述べるイベントが有り、ビデオ放映も行われた。光栄だったのは、私の「BOOKS HIRO」も短い時間だが話題にしていただいた。日記のみの選書がユニークであるとのお褒めのコトバ。これは嬉しかった。

その後の話で印象に残ったのは2つ。

(1)古書の売れ方は、数を稼ぐべき新刊書とは違い、1冊の勝負。世界の中にはピンポイントである本を欲しがる人がかならずいる。それを考えた売り方が必要。

(2)古書店は専門化すべき。商売を永続化するべき

このあと、棚主20数名の自己紹介とQ/AがZoomで行われた。多士済々といった感じ。横のつながりをもたせると面白いことになるかもしれない。なにか仕掛けてみたい。

話は戻って、お手伝いで書棚の整備をやってよかったのは、「選書」の面白さに気づいたこと。そして本を並べてみるとバラバラであるはずの本が有機的につながるような気がちょっとした。PASSAGE書店の面白さがここにある。自分と「趣味」の合う人とは友だちになれそうな気もする

ネズミのしっぽ問題が散見された。図書館では窓口の方がよくぼやいておられる。栞のヒモを本の下にはみ出させるべきでない。


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帰りは22時50分頃になった。電車社内はがらがら。終点であわてて飛び降り向かいのホームにきている電車に乗り込む人が何人かいるようだ。 




2022年2月26日土曜日

PASSAGE by ALL REVIEWSの開店準備に孫はあまり役に立たなかった(要するにおじゃま)

土曜日は孫の育児補助の日。今日は2時半まで家で預かって(父親と二人)、その後帰ってもらうことにしていた。しかし父親の希望で(昔大学に通っていて懐かしいらしい)、散歩代わりにすずらん通りまで一緒にやってきた。電車に1時間近く乗っていたが騒いだのは5分程度。お腹が空いたせいだ。


せっかくなので(こちらの都合のせっかくで必死の仕事中の皆さんには申し訳なかったが)PASSAGEの中を覗かせてもらうことにした。さすがに、1歳半の孫にはなにがなんだかよくわからなかったようだ。父親は本棚の中身を見て興味深そうにしていた。ぐずりだしたので、10分程度で直ぐ帰したが、なんとその後1時間ぐらい神保町をベビーカーを押して歩き回ったらしい。風邪を引かせたのではないかと心配。

(写っていないが)後方で作業中の皆さまお邪魔してすみませんでした

私は、作業を16時45分に開始して、書評家さんの書棚ひとつ分の価格シール貼りをしただけ。今日はお休みに近い。明日は頑張る。マンションの管理組合の総会があるが、配偶者だけに出席してもらう。いつもは二人で出るが、密を避けようという口実で。


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まだ二日間を残しているが、クラウドファンディングは見事目標150万円を達成した。中心となって頑張ってくれた学生諸君には感謝したい。昨秋には実現できると思わなかった。自分の不明を恥じる。それ以上に若さの偉大な可能性を感じた。


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負けてはいられぬと、PASSAGEの書棚に置くリーフレットの文章の第2稿を書いた。

BOOKS HIRO店主のわたくしが読書、なかでも日記文学の読書をおすすめする理由

なぜ自分は読書を好むのか、というギモンに対する一つの答えを見いだしました。それは、同好の士に会えるからです。同好の士は、時空を超えて存在します。毎日『トーマス・マン日記』を読み続けた今は、トーマス・マンは同好の士です。自分と似たようなことで悩み、あるいは喜びを感じる人がいる。そこに、こよない嬉しさを覚え、孤独の哀しみが和らぐ気がします。

少し前に書いた文章を引用します。
「トーマス・マンが自分と同じ年齢で、頑張って著作にはげみ、その材料収集だけにとどまらない膨大な読書を、不自由な亡命先で続けている。肺の感染性膿瘍(たぶん結核が原因)で、危険な手術を受けながらもなんとか回復して、書き続け読み続ける。入院先では、看護人の優しさに魅せられたり、麻酔術を受け意識の遠のきと回復を興味深く体験し、はじめてベッドから立ち上がるときのときめきや虚脱感のなかで、生きていることを実感する。これらの感覚は3年前の入院時にわたくしもほとんど同様に感じた。トーマス・マンは自分の「弱さ」も、亡命先での不便な生活の苦しさも、「正直」に日記に書き込む。世界のこちら側でわたくしは『トーマス・マン日記』や『ファウストゥス博士の成立』に書かれた文章を読んで、そうだそうだと一人で相槌をうつ。」

大げさに言えば、この宇宙の中で自分は一人ではない、自分と同じ考えの人がいるのだと思うと、安らぎを感じるのです。

2022年2月25日金曜日

PASSAGE by ALL REVIEWSの書棚(マルセル・プルースト通り14)に置くリーフレットの原稿を書き始める

 本日もPASSAGE by ALL REVIEWSの開店準備のお手伝いに行った。作業したのは、価格シールと蔵書票シールを裏表紙に貼ること。50冊くらいやったら腹が空いたので、向かいの「小諸そば」に行ってかき揚げそばを食べる。400円。うまい。その後、120冊くらいやっているうちに、今度は眠くなってきた。眠気覚ましに、同じく友の会から手伝いにきたKさんの差し入れの桜餅(道明寺風)をいただく。桜の葉が2枚にくるまれている。これもうまい。今日は店主ご夫妻のご都合により、17時で撤収。結局あまり使わなかったディスプレイ・ケーブルを持ち帰る。

帰って、夕食後、PASSAGE by ALL REVIEWSのご近所の〈文銭堂〉で買ってきたお土産のモナカ〈銭形平次〉を食べる。

思い立って、PASSAGE by ALL REVIEWSの私の書棚(マルセル・プルースト通り14)に置くリーフレットの原稿を書き始める。本に手製の帯をまこうと思ったが今日たくさんの本を整理していて、帯は痛みやすいことを痛感したからだ。実は書店員としてはないほうが取り扱いやすいと言う意味でありがたい。リーフレットとして持ち帰ってもらう案を検討したいのだ。

第1稿

私(hiro)の推しは「日記」です

私が日記を読む目的はつぎの2つです。

1.有名作品の執筆背景への興味を満たす

(例えばトーマス・マンの『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』執筆の顛末)

2.自分のブログ日記の参考とする

〈私のオススメの日記10選〉

  (*)がついているのは今回書棚に置いたものです。


1.『トーマス・マン日記』(紀伊國屋書店)全10巻 (* そのうち5巻)

2.辻邦生の日記

(1)『パリの手記』(河出書房新社)全5巻

(2)『モンマルトル日記』(集英社)

(3)『パリの時』(中央公論社)全3巻

3.森有正の日記『森有正全集』(筑摩書房) 13巻と14巻  (*)

4.森鴎外の日記『鷗外全集』(岩波書店) 1巻

5.夏目漱石の日記『漱石全集』(岩波書店) 1巻

6.サートンの日記

7.内田百閒の日記  (* 『百鬼園日記帖』(福武文庫) )

8.永井荷風の『断腸亭日乗』 

9.『アシモフ自伝』(早川書房)全4巻 (自伝と称しているが実は日記に近い)

10.神谷美恵子の日記

 <今読んでいる日記>

1.斎藤茂吉の日記『全集』(岩波書店)全4巻 他に手記が2巻

2.自分の若い頃の日記ノート10冊と手帖20冊

(これは、ブログへの転載を計画中、完成すれば18歳から死ぬまでの80年分の「日記」ができるはず。)

上記の(*)以外に

『Tagebuecher 1946 - 1948: 28. 5. 1946 - 31. 12. 1948』

『闘う文豪とナチス・ドイツ - トーマス・マンの亡命日記』(中公新書)

など置いています。

書棚の写真。

暫定版、もっときれいになる予定だ



2022年2月24日木曜日

開店直前PASSAGE by ALL REVIEWSの書店運営のお手伝い記

昨夜から今朝にかけてALL REVIEWS友の会Slackで動員令が出された。PASSAGE by ALL REVIEWS書店の開店直前の大量の作業の手伝いに、朝10時過ぎに神保町に向かう。

実は昨日も自分の貸し棚への本の納品と棚主としての店側との打ち合わせに、PASSAGEに行き、そのついでに書店側の作業のお手伝いを少しした。PASSAGE書店運営側のスタッフは2名だけで、今回のような忙しい時期には手が足りない。

PASSAGE by ALL REVIEWSの「プロデュース」はALL REVIEWSがおこなっているので、ALL REVIEWS友の会会員としては見かねて手伝う人が現れた。私もその一人だ。

11時に現地(お店)に到着し、書評家さんの送ってくれた本の販売システムへの登録作業を行った。昨日も含め数十冊やってみた結果、私はこのような地味な作業をするのは無理だとわかった。生まれつきそうなのだろうが、年をとってますますミスをおかす割合が増えた気がする。 

途中で仕事を変わってもらい、できそうなこと(メールの作成)をやらせてもらう。オープン直前に行う鹿島茂さんの記念講演の通知の文案を考えて責任者の承認を受け、友の会内部にはそのままSlackで流し、棚主さんへのメールは責任者から出してもらった。

これで少し気が楽になった。夜、皆との食事の後、本に貼る価格シールと蔵書票シールの貼り方をマニュアル化する。

これはダミーのシールです。PASSAGE by ALL REVIEWSは
完全キャッシュレス決済なのでバーコードシールは必須。


本日は作業終了、明日も出動し、シール貼り作業を行うことにする。自分の出品本のセールスポイントを文章にまとめ、本の手製帯に書き込む作業もしたい。

新しい店舗の開店直前の忙しさはみな似たような感じなのだろう。この年になって言うのも変だが、ためになった。

もう深夜12時をまわった。明日も出勤なのでもう寝よう。自宅で二回目の夕食を摂ったのはやりすぎ。

ロシア軍がウクライナに入ったというニュースも知らずに夕方まで作業していた。

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MacbookProを持ち込んで作業していたが、充電用のケーブルを外していたら、1時間程度でパワーオフするのに気づいた。通常は充電ケーブルを繋ぎっぱなしにしているのでまったく気づかなかった。

2022年2月23日水曜日

メルマガ「週刊ALL REVIEWS」の巻頭言として三中信宏さんの『読書とは何か』の一読後の所感文を書いた

昨日発行されたメルマガ「週刊ALL REVIEWS」の巻頭言執筆は、私の担当だった。

先週の「公約」通り、三中信宏さんの『読書とは何か 知を捕らえる15の技術』(河出新書)の一読後の所感文を書いてみた。この本自体についても、この本に含まれた「知を捕らえる」読み方をするには、私には時間がかかるだろうことを実感した。しかし勇気を持って、今理解したことをアウトプットしてみた。アウトプットすることによって、この後の理解がより早く深く進むことを期待したい。巻頭言は以下の通り。

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三中信宏さんの『読書とは何か』は一般読者を「狩人」(熟練読者)に変化させる(標題)

三中信宏さんの新著『読書とは何か : 知を捕らえる15の技術』(河出新書)を読んだ。著者は、農研機構の専門員であり、東京農業大学の客員教授でもある。進化生物学や生物統計学を専門とする研究者という著者が、このような一般向けの読書の手引を書いたことに少し驚いた。でも本当の専門家は難しいことをやさしく説明する本も書けるという証明になるだろうと、考えなおした。この本は一言でいうと、通常の読書を脱却して、「狩りとしての読書」に到達するための手引書である。積極的な読書によって、読書の「楽しみ」を増やすという意味で一般読者にも有効な読み方のヒントが満載されている。書物の字面を読むだけでなく、執筆時の著者の「構想」も読み取ることが大切で、これは読者がその本を「再執筆」することにも相当する。このように、読書とは得るものが大きく、本来自由自在であるべき行動だ。この行動を著者は「狩り」にたとえたのだと思う。

狩りとしての読書つまり漫然と読むだけではない能動的な読書が、読者の読む楽しみを飛躍的に増やすことになる。これは以前読んだ同著者の『読む・打つ・書く』でも言われていたことだ。前著との違いは、「読む」立場からの記述に徹していることだ。私のような専門書や論文を読むことがあまりない一般読者に向いた本になっている。

第一章は「知のノードとネットワーク」として、「読み方」の基本を教えてくれる。読者は本を読みながら付箋をつけたり書き込みをしたりして、心に響くポイントつまり著者の言う「ノード」を拾い集めていく。これだけで満足していてはいけなくて、拾い集めた「ノード」を頭の中で「ネットワーク」に構成していくべきである。この両方のプロセスのなかで読者は新しくより深い知見や感動を得ていく。これを「狩り」に著者はたとえている。

第二章から第四章までには、読書術の基本・応用・発展の技が著者の経験から抽出してうまく例示されている。第一章で述べられた狩りとしての読書を実行する上でのノウハウがふんだんに紹介されている。これらをすべて実践するのは私のような素人読者には無理なのだが、自分でもやっている技を確認し、知らなかった技があれば(たくさんあったが!)そのうちの気に入ったものを実践してみれば良いと割り切って読んだ。この「割り切り」術も、狩人の技として紹介されている。

かなり「危険」な本なのかも知れない。楽しければ良いとだけ思っていた読書という行為に、狩りにたとえた積極的な意味をもたせようと著者が巧妙に誘ってくる。それ自体は非常に魅力的なのだが、誘いにのると読書の世界という奥深い森で狩りを自分で体験せざるを得ず、下手をするとその森から永遠に戻れないかも知れないのだから。

研究職のかたや文筆業のかたには当たり前かもしれない「深い読書」を、「狩り」というたとえで、私のような普通の読者にも出来るかも知れないと思わせてくれる。この理由でこの本はすべての読書人におすすめだ。新書版かつ安価な本でありながら、この本の索引や文献リストの充実していることに驚いたことを最後に付け加えたい。ここにも読者を「狩り」へと誘う著者の深い「たくらみ」が隠されている。(hiro)

なお、三中信宏さんのご紹介を「著者は、農研機構の専門員であり、東京農業大学の客員教授でもある。」とした。「一般読者」の私には書籍に付けられた紹介文の組織名が難しすぎたので簡略化した。三中信宏さんおよび関係者にはご寛恕を願いたいものだ。ここで言っても詮無きことかもしれないが。

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本日はPASSAGE書店へ行き、自分に割り当ててもらった棚に、好きな「日記」本を並べてきた。これだけでは、お客様へのアピールがたりなさそうなので、手作りの帯を巻く。帯には手書きで、本の惹句を記入したい。今月中に。


明日は書評家さんたちの棚の本の登録作業を手伝いに行くことにした。開店間近でPASSAGE書店運営側は大忙しなので。

作業の合間に、覆麺へ。ラーメンは、あいかわらず至福の味。 



2022年2月22日火曜日

PASSAGE書店の棚主活動を再開して明日は納品予定とする

今朝のお仕事。


今朝入手したニュース。

第34回東京大学理学部公開講演会 Online

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/event/7653/

開催日
2022年3月22日(火)
時間
14:00~17:05
※理学部1号館講義室よりライブ講演


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今夜のオシゴト。

PASSAGE書店のなかの私の棚に納品する本を2冊追加。『森有正全集』の13巻と14巻。どちらも日記。この本の売りは栃折久美子の端正な装丁だ。かなり古いので300円。『トーマス・マン日記』5冊と合わせて7冊を明日持ち込みしたい。蔵書票というのが店主用のアプリでダウンロードできるようになった。


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図書館で3冊借りてきた。どれも面白そうだ。 


『象の旅』は先日の「文舵会」で紹介いただいたもの。冒頭だけ読んでみた。

なるほど。会話の「」がないのに誰が言っているのかよく分かる。

2022年2月21日月曜日

『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』を観て修道士の隠遁生活にあこがれる

https://amzn.to/35gxdSY

 『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院(字幕版)』を観た。Amaon prime videoで。長い。修道院のなかの生活を描いている。修道士間の会話は日曜日の昼食後の短時間だけ。その他は祈りと瞑想と読書と自給自足のための最小限の労働のみの生活。「静寂」であるべき世界で聞こえるのは、鐘の音や風の音や雨の音や食事を独居房に運ぶワゴンの音なのだが、意外にもこれらの音が「静寂」を際立たせる。

静寂の描写も魅力的なのだが、私が感銘を受けたのは、修道士の隠遁生活の様子だ。礼拝と労働の無言の時間以外はすべて独居房を中心として、読書と瞑想三昧の生活が送れる。簡素な食事は当番の若い修道士が配ってくれる。刑務所の独房のような小さな扉から差し入れられるのだが、それを気にしなければ、素晴らしい(精神の)自由な生活が送れそうだ。噂でしか聞いていないが、日本の禅寺などでの修行僧の生活よりは、個人の生活が守られているような気がする。つまり、こんな生活を自分もしてみたい。

以前のブログでもこれに類した感想を書いた。

https://hfukuchi.blogspot.com/2020/04/blog-post_12.html

https://hfukuchi.blogspot.com/2020/04/blog-post_13.html

https://hfukuchi.blogspot.com/2020/04/blog-post_15.html

これに加えて、モンテーニュやプルーストや森有正の隠遁生活へのあこがれも、文章にしてみたい。今年の宿題とする。

すでに今の私の生活も隠遁に近いのだが完全ではない、「創造性」が付け加わることが必要なのだ。

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と、言いつつ、PASSAGE書店の棚に入れる本の値付と添付するビラの内容・形態を決めないといけない。明日やってしまおうと焦っている自分がいるのが可笑しい。そしていつ納品するかも決めないとね。

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寝る前にやってはいけないTwitter覗き。でも「まとも検索」というサイトを知ったので、良しとして寝ます。明日、これで「隠遁」を検索して楽しんでみる。

https://fukuyuki.github.io/mtm.html

2022年2月20日日曜日

古本を買いまくるだけの『蒐書日誌』(大屋幸世)がなんで面白いのか


大屋幸世『蒐書日誌 一』を読み続ける。なるほどと思ったところをメモしてみた。

6頁。

谷崎精二訳『赤い花』……ガルシンの日本の受容史、書誌を考えている……

7頁。

松崎天民本書誌はまだ当分作れそうもない。

9頁。

かろうじて『目醒時計』の並本が手にはいる。手元不如意を思ってホッとしたところもある……

#でも3万5千円! ここで問題にされているのは砂子屋書房版、赤塚書房版は「あっても」と8頁に書いてある。

天民本の異本四冊となる。

『お冬さん』を二百円で得る。これで市民文庫151冊になる。あともう一歩で書誌を作れるところまで来たが、この一歩が一年かかるか。二年かかるかわからない。今日一本を得て心楽しい。

#この『お冬さん』も5月には国会図書館デジタル・コレクションで閲覧できそう。そうなれば、皆の予測とは別に、もっと古書店に通うようになるだろう。「呼び水」というコトバは井戸にだけ当てはまるのではない。

12頁。

家内と香織の退院の日。……帰宅後、家内のうらめしそうな目を背に感じながら、神田に出向く。……小宮山書店の解放された倉庫へ行く。……安く大量に買い込んで帰宅、家内あきれている。もっともなり。

19頁。

〈宇宙〉としての書物というものも考えている。無限の世界……をひとつの理想的な型のうちに封じ込めてしまう行為もあってよい……

35頁。

創元社は大正14年6月10日創業。創元社史すこし知ってみたい。

34頁。

評論「皮膚文学と臓腑文学」……かつて私の編んだ『森茉莉 ロマンとエッセイ』の著作年譜には書きもらしたものである。

このペースで全部を読み続けると、いつ終わるかわからない。おまけに『蒐書日誌 二も今日注文してしまい、それも気に入ったら『三』と『四』も手に入れそうなこわい予感がする。拾い読みに切り替えることにしたい。幸い、索引はしっかりしている。

日本、カーリング女子、銀メダル!おめでとう。

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この後、『読書とは何か』の巻頭言原稿を提出稿にし、仲間にチェックしてもらう。メルマガ発行は火曜日。 

この作業をしている最中に偶然に見つけた素晴らしいサイト:「古雜文庫」

http://kozats.work/index.html

明日精査しよう。

2022年2月19日土曜日

『読書とは何か』で紹介されている大屋幸世の『蒐書日誌』(皓星社)を道連れに古本屋巡りをしたい

『蒐書日誌』は4巻本

『読書とは何か』の128頁付近で紹介されている『蒐書日誌』。三中さんから「蒐書という営みの“業”の深さを私に刻みつけた印象的な本だった。」と評されている。非常に気になったので、先日古本で注文しておいた。安かった。昨日その本が届いたので、早速孫の世話手伝いに「出勤」する電車のなかで読み始めた。

猛烈に本を買い集める自らの姿を、大屋幸世が修飾なしの簡潔な日誌として記録している。「日誌」としてのスタンスは、この私のブログに通じるものがある。ただ、違うのはこの著者がひたすらに、猛烈に本を集めていること。初版本や稀覯書も集めること。大学の教授だった著者に、そんなに金があったのかという下衆の勘繰りをしたくなる。もちろん、この日誌を読む立場からすると貴重な本、美しい本を多数集める話は大歓迎なのだ。

まだ最初の30頁しか読んでいないのだが、その中でいくつもの「夢」を著者大屋幸世は語っている。自分だけの蔵書群を作り、特定の人やテーマに関する「書誌」を作りたいということだ。こんな目的意識を持てば闇雲な蒐書ではなく、「狩り」としての積極的な蒐書ができる。そうすると、「蒐書」の記録は面白くなる。

ひたすら本を買い漁る人、マニアックな大屋幸世の人となりも、知りたくなる。

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今日はハードワークだったので、帰りの電車ではほとんど読書できず。疲れて眠いので、今日のブログはここまで。 

2022年2月18日金曜日

『文体の舵を取れ』の練習問題回答の合評会はますます楽しくなってきた

 来週の巻頭言第2稿作成。明後日の日曜まで寝かせて、提出稿とする。

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ALL REVIEWS友の会の仲間とやっている、グゥインの『文体の舵を取れ』の練習問題回答の合評会、その第2回を開催した。コーディネーターはRKさんにお願いした。私がやるよりずっとお上手だった。

通常の読書会(あまり参加してはいないのだが)より、楽しい。やはり「書く」ことを媒介にしているからだろう。

皆の感想の一部。

  1. 江戸時代以前は一般的に句読点は存在しなかったということも考えておきたい。
  2. 全体が一文で書かれていて一見わかりにくいが読み上げるとよくわかる回答文章があった。文章そのものの力を感じるもの。グゥインさんはここを狙わせたのだろう。作成者はこれにより自分の書き方の殻をやぶれたとのこと。素晴らしい。
  3. 「群衆」を描くことにほぼ成功した文章もあり、素晴らしい。
  4. 練習問題の問題文にあるサラマーゴの『象の旅』(書肆侃侃房)は、面白い。他のメンバー:「ぜひ読みたい。」
  5. 前回は回答を「書く」ことに意味を見出したが、今回はそれに加えセッションそのものが重要だし、楽しいと思った。
  6. 少人数でも毎月開催すべき。
  7. 提出回答への事後句読点付けは各自で行うことで良い。

2022年2月17日木曜日

三中信宏さんの『読書とは何か』(河出新書)に関するメルマガ巻頭言用所感文の第一稿を書いた

 『読書とは何か』に関するメルマガ巻頭言用所感文の第一稿を書いてみた。「プロローグ」と「エピローグ」のみここに掲載してみる。

プロローグ:

新刊の『読書とは何か 知を捕らえる15の技術』(河出新書)を読んだ。著者の三中信宏さんは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の専門員であり、東京農業大学農学部生物資源開発学科 客員教授でもある。進化生物学や生物統計学を専門とする研究者という著者が、このような一般向けの読書の手引を書いたことに少し驚いた。でも本当の専門家は難しいことをやさしく説明する本も書けるという証明でもあろうと、思い返した。

(中略、ここにはこの本が読書の手引としてなぜユニークなのかを書く予定。)

エピローグ:

研究職のかたや文筆業のかたには当たり前かもしれない、「深い読書」を、私のような普通の読者にも出来るかも知れないと思わせてくれるこの本はすべての読書人におすすめだ。この本は新書版の安価な本でありながら、索引や文献リストの充実していることに驚いたことを最後に付け加えたい。ここにも読者を「狩り」へと誘う著者の深い「たくらみ」が隠されている。

中略の部分も大体はできているが、これから数日全体の推敲を続ける予定。来週月曜日に友の会の仲間に読んでもらい、OKならば火曜日にメルマガに掲載する。

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昨日からクリスティアーノ・オウツという人の演奏するチェンバロの響きに魅せられている。

チェンバロという楽器のことはよく知らないので、バッハの平均律のアルバム(写真)で彼の使っているという楽器が歴史上どんな位置づけなのかはよくわからない。ともかくブックレットによると、「Harpsichord (16', 8', 8', 4') by Matthias Kramer,aft er Christian Zell, Hamburg 1728」というものらしい。この素性を調べるのも楽しい作業になりそうだ。

https://ml.naxos.jp/album/RAM1912

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オリンピックスピードスケート1000メートルで髙木美帆選手が優勝。いろいろなことがあっての優勝なので、髙木美帆選手の心身両面の勁さに脱帽するしかない。スゴイ選手だ。

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ところで、今日午後、こんな引用ツイートをしてしまった。半分以上本心から書いている。昔の絵日記や日記や会社員時代のメモ帳をデジタル化してこのブログに加えるという昔の計画を実現すれば、まんざら嘘にはならないだろう。コツコツと頑張る。




2022年2月16日水曜日

『あおいよるのゆめ―ちいさなゆびで』は美しくて面白い絵本

オリンピック、女子FS出場のグバノワ(ジョージア)のSP曲、「Une vie d'amour」(ミレイユ・マチュー)はいい曲だ。

https://www.youtube.com/watch?v=efwFBGrLt1s

https://www.youtube.com/watch?v=IAMpAxGEDSE

冒険研究所書店@bokenbooksさんが去年5月に開店していた。大和市の桜ヶ丘駅東口前なので割に近い。

 LaTeXを使って電子書籍を作ることを構想中。PDFで。数式はもちろんん、縦書き、ルビも可能だし、LaTeXで索引・目次・引用文献表もできるだろう。

川本直さんの『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』に関するこの「紀伝体での書評」は素晴らしい!中西恭子さんはさすがだ。

https://web.kawade.co.jp/bungei/34140/

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孫の読書リストに1冊追加した。

  1. はじめてのピアノ (かわいいおとえほん)、、成美堂出版、2017/7/1
  2. くだもの (幼児絵本シリーズ)、平山和子、福音館書店、1981/10/20
  3. まあるくなーれ わになれ (たんぽぽえほんシリーズ)、真珠まりこ、鈴木出版 、2020/6/24
  4. パンどろぼう、柴田ケイコ、KADOKAWA、2020/4/16
  5. おかおがぽん!、ただゆめこ、(自治体配布の非売品)、2016/4/1
  6. くだものさん (PETIT POOKA) 0~3歳児向け 絵本、tupera tupera、学研プラス 、2010/7/20
  7. やさいさん (PETIT POOKA) 0~3歳児向け 絵本、tupera tupera、学研プラス 、2010/7/20
  8. しろくまのパンツ、tupera tupera、ブロンズ新社 、2012/9/1
  9. フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし、レオ・レオニ、好学社 、1969/4/1
  10. くっついた、三浦太郎、こぐま社、2005/8/1
  11. しろくまちゃんのホットケーキ、わかやまけん、こぐま社、1972/10/15
  12. きんぎょがにげた、五味太郎、福音館書店、1982/8/31
  13. いないいないばあ、松谷みよ子、童心社、1967/4/15
  14. ノンタン もぐもぐもぐ、キヨノサチコ、偕成社 、1987/8/27
  15. ねないこだれだ、せなけいこ、 福音館書店、1969/11/20 
  16. あおいよるのゆめ―ちいさなゆびで、ガブリエーレ・クリーマ、World library、2014/1/1

最後に追加した本はとても美しい。



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『読書とは何か』の巻頭言用書評を構想中。

「狩り」としての読書に到達するための手引。読書の「楽しみ」を増やすという意味で一般読者にも有効な読み方のヒント。執筆時の著者の「構想」を読み取ることは読者も「執筆」することに相当する。読書とは自由な、自由であるべき行動だ。

もっとScrapBookの情報を活用しなければ駄目だ。

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エピグラフに関する面白い記事。


https://note.com/sogensha/n/n1885a53f044d

https://note.com/sogensha/n/na79e83c7a87e?magazine_key=m8e2e0b3b9579

2022年2月15日火曜日

四次元構造の思考を一次元の文章に表すのは難しいがScrapboxが助けになるだろうか

懸案だった(要するに破損して水漏れしていた)INAXホース収納式シングルレバー洗髪シャワー混合水栓(SF-53S(500)/N88)用の部品を探しあてて、発注した。多分これでいけるだろう。

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昼食後、税務署に行き確定申告書を提出した。まだ提出窓口は空いている。

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Scrapboxを使い始める。面白い。が、まだ使いこなせない。

練習を兼ねて、『読書とは何か』についての巻頭言を書くための準備をScrapboxで始めた。巻頭言のような短い文章でも、書き表したい要素は立体的な構造をなしている。それをうまく、文章というシークエンシャルな形式に落とせるか。先に「構造」を明確にしないといけない。それをScrapboxを使って解決できるだろうか。

https://scrapbox.io/hirosreviews/

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色々やっていたら、読書がはかどらなかった。花粉症のせいもある。

2022年2月14日月曜日

『三大編纂物 群書類従・古事類苑・国書総目録 の出版文化史』(勉誠出版)を楽しみに読み始める

午前中に確定申告書を作成した。明日税務署に提出に行くつもりだ。まだ時期は早いし、午後の空いた時間に行けば密は避けられるだろう。

作成には昨年同様国税庁のページで行った。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/index.htm

昨年のデータを読み込んでから作業したので入力が楽だった。計算は11月と12月分の医療費だけ。10月分までは健保組合から計算書が郵送されてきていた。健康保険の保険料納付証明書は健保のサイトからダウンロードした。

ともかく、昨年から青色申告をやめたので非常に楽になった。半日作業。

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確定申告書ができたので少し安心して、熊田 淳美(くまた あつみ)さんの『三大編纂物 群書類従・古事類苑・国書総目録 の出版文化史』(勉誠出版)を読み始めた。

https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=3221

「はじめに」によると、

『群書類従』は現在の貨幣価値で十数億円の直接経費、
『古事類苑』の全経費は数十億円、
『国書総目録』は数億円かかったという。それぞれ長い年数がかかっている。
編纂物であったり、総合目録であったりする、これらの書物それぞれがデータベースとしての利用価値を持ち、いわば「壁のない図書館」の機能を果たす。

著者は国立国会図書館の副館長もつとめていた。

「あとがき」を読むと、
『国書総目録』は岩波書店が刊行したのだが、国の手ではなく民間の手で行われたことは驚くべきことであり、国会図書館がやるべきではなかったかという感想を著者は持った。そして、このような大事業の契機、可能になった要因と歴史的背景はに興味をひかれた。調べていくうちに、『群書類従』や『古事類苑』の成立にも踏み込むことになったという。

国と民間が協力しなければならないという問題提起もある。

本文はまだ読んでいないが、著者の問題意識を知ると、より面白い読書ができそうだ。

ところで、国書総目録(PDF版)はここで実物を見ることができる。https://kotenseki.nijl.ac.jp/page/kokusho.html


2022年2月13日日曜日

加藤周一の『日本文学史序説』では、唐船で実朝は宋への亡命を望んでいたかも知れないとしている


まとめ方も含め、これには脱帽である。

https://scrapbox.io/monkey-search/

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加藤周一『日本文学史序説 上』(筑摩書房 昭和50年)を久しぶりに取り出して読む。源実朝に関する記述を索引を利用して探した。

243頁。

「将軍は武士の権謀術数の道具にすぎ」ないとし、それを知っていた実朝が最後の(正統な)将軍としてできるだけ官位昇進を願ったという。1216年(建保4年)の「吾妻鏡」による。その2ヶ月後「唐船」を作らせたが進水に失敗し宋に渡ることを断念したが、「計画は本来亡命を目的としたものであったかもしれない」とある。

このあと(247頁)には、鴨長明が「方丈記」で描いた「大火・地震・伝染病の流行」のことが出てくる。和田義盛の反乱後、大地震が鎌倉付近であったことが大佛次郎の『源実朝』にも書かれていた。現代のことと考え合わせてみるのも悪くない。

私の持っているのは単行本のほう、これはちくま学芸文庫版

これらも参考にしよう。
https://saigaku.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=789&item_no=1&attribute_id=73&file_no=1&page_id=13&block_id=21

https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=10769&item_no=1&page_id=13&block_id=21


https://ci.nii.ac.jp/nrid/9000406346132

2022年2月12日土曜日

大佛次郎『源実朝』を読み終えた―芸術と政治の融合

大佛次郎『源実朝』の前半の位置づけの中編、「新樹」の後半(!)を電車の中で読む。


120頁。
実朝のお気に入りだった老いた源氏の家臣和田義盛の望みを、北条義時の妨害で叶えてやれなかった。沈み込んでいた実朝のもとに後鳥羽上皇から密書が届いた。近習の和田朝盛に、勤王の強い意志を示す堂々たる和歌を示す。

153頁。
和田義盛はついに執権北条義時への叛旗を翻す。小人数だが一時は優勢だった。義時の奮闘指揮により結局は討ち取られる。実朝はそれを見ていることしかできない。

154頁。
直前に出家した和田朝盛は生き延びて、都に向かったらしい。私の推測では後鳥羽上皇への自発的な密使の役割を果たしたのだろう。鎌倉では大地震が続く。

155頁。
実朝は孤独に夜の仮御所の南面に座っている。和歌だけが実朝の心を慰めてくれる。

この和歌を通じてのみ、都とつながっているのだが、それをも乗り越えて、歌を詠む楽しみが実朝のこころを静かに満たしている。

164頁。
この先突然に宋に渡ろうとしたことも、和歌も、実朝の「巨大さ」を物語ると大佛次郎は書く。

これで『源実朝』は読み終わった。

このあとは、『吾妻鏡』を斜め読みし、実朝の和歌、定家、鴨長明、後鳥羽上皇などを調べていこう。北条家のひとびとはあまり深く調べる価値がないかなと思い始める。

電車は意外と混んでいる。

ところで、TwitterTLで見たこの話はちょっと怖い。私はともかくとして、若い人が罹患しているので、後遺症の問題は注意しないといけないだろう。



2022年2月11日金曜日

実朝は和歌の道に何を託そうとしたのか


大佛次郎『源実朝』の前半、「新樹」を読み始める。100頁、3分の2ほど読む。題名「新樹」が示唆する通り、若くして将軍になった実朝が成長していく物語。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公北条義時とその父時政、姉の政子が活躍するが、三谷さんが面白く造形した三人の実像を見るような感じがした。(もちろん、これは大佛次郎の解釈による「実像」なのだが……)

実朝は若く政治向きのことにはなかなか口を出せない、もちろん義時がそのように誘導している。実朝は就寝中に見た夢をいつも忘れずにいてこれまた若い御台所にその話をする。

また、実朝の鬱屈をはらすものとして、鎌倉とその周辺の美しい自然があり、そこで得た感慨を表現する手段としての和歌作りが重要性を帯びてくる。古今集の見様見真似の習作にすぎない出来と思われた18歳の実朝の歌を、都の藤原定家が見て、万葉の歌を感じる。珍しい器量だとも思うし、この歌の良さを理解するのは後鳥羽上皇だろうと感じる。

その後、鴨長明が実朝を訪ねるが二人が理解し合うということはなかった。翌年「方丈記」を書く鴨長明の老成した人柄を実朝がうとましく思ったのは無理からぬ事だった。

明日は「新樹」の後半を読む。実朝と義時の間には決定的な溝ができそうな気配だ。

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明日は孫の世話のための土曜出勤。行きの電車のなかで読み終えるだろう。一昨日発熱して保育園を早退した孫は今日は平熱に戻ったらしいので一安心。暖かければ近所の公園で少し散歩させられるだろう。

図書館で『旅のことば 認知症とともによりよく生きるためのヒント』を予約した。

昨日朝予約した『三大編纂物 群書類従 古事類苑 国書総目録の出版文化史』はもう近所の図書館に届いている。

2022年2月10日木曜日

大佛次郎の『源実朝』は動かぬ唐船の姿を鮮やかに描き出す

大雪の予測が出ていたので、買い物は早めに3時頃でかけた。スーパーの上階にある図書館に行き、大佛次郎の『源実朝』と小川公代さんほかの『文学とアダプテーション ヨーロッパの文化的変容』を借りてきた。

【辻邦生の「浮舟」構想の追求プロジェクト】を続ける。

今日借りてきた大佛次郎の『源実朝』(六興出版)そのものは昭和53年出版だが、実際に雑誌連載小説として執筆されたのは昭和17年から昭和21年にかけてであったらしい。(村上光彦さんの「解説」による。)大佛次郎が海軍報道班員として南方に行ったため、途中中断した。そのため「新樹」と「唐ふね」という2つの中編小説の連作という形になっている。どちらも源実朝が「主人公」で、将軍になったばかりのときと、公暁に斬殺されるまでのことが描かれている。

当然、「唐ふね」を優先して読んだ。唐船の姿が鮮やかに描かれている。美しく大きく建造されるさまと、海岸で朽ち果てながら民衆の焚付ともなっていく姿。宋の医王山に行くことを望んで果たせなかったのが砂浜に擱座したままの唐船の姿に仮託されて描かれる。船が進水できなかったのは消極的なサボタージュがあったためだろうと推測する。公暁が実朝を暗殺するのを止められる人(義時)がいながら止められなかったことも同根だ。

実朝が歌会を催すが東国武者たちは作歌に苦労するというところも読みどころか。

現実の政治に心をくだく執権側の人々と、実朝の理想主義との温度差がこの物語のテーマだろう。

辻邦生はこの小説を読んだだろうか。これもプロジェクトの宿題として頭に入れておきたい。「吾妻鏡」を読んでいれば必要がなかったのかという疑問も。


***

冬季オリンピック大会で、羽生結弦選手が痛い足を励まして、公式には初の4回転半ジャンプをこころみ、転倒。しかし4位入賞を果たした。彼の精神力の強さを感じる。

2022年2月9日水曜日

辻邦生の「浮舟」はこのような作品になるはずだっただろう

 昨日のブログで「「浮舟」については辻佐保子『辻邦生のために』(中公文庫)176頁を参照。」と書いた。



この本の176頁からの「「浮舟」の構想をめぐって」をもう一度読み直した。

以下引用。

180頁。
『西行花伝』に続いて定家と後鳥羽院を主人公にした小説を書くという三部作の計画は、かなり以前からのもの……

182頁。
しかし、いつからとは言えないある時期以降、定家から実朝へ、京都から鎌倉へと、主な関心が移行していった。最後には隠岐の島(後鳥羽院)も定家もしだいに後景に退き、鎌倉と実朝にすべてが収斂してゆく。それと同時に「浮舟」という仮題が浮上し、この新しい構想を名指すようになる。

183頁。
「浮舟」は源氏物語のコンテクストから切り離され、雪景色や橋といった状況説明のためのモティーフは消失し、さらには宇治川も主人公もそれぞれの名前から解放されるのである。無名となった恋人たちは、船頭の漕ぐ小舟にゆられて、月影の下をどこか行方のしれない船旅に出る。あたかも彼岸への旅立ちであるかのように。

184頁。
由比ヶ浜から中国に船出しようとして挫折した、あの実朝の唐船を連想させたからに違いない。

185頁。
「ファースト・シーンは八幡宮の石段を牛車が駆け落ちる場面、ラスト・シーンは隠岐の島、慈円を読んでいるらしい」

186頁。
鎌倉八幡宮の石段を火におびえた牛車の牛が駆け落ちてくる。
群衆は立ちすくみ、牛車は微塵にこわれる。
実朝暗殺。嵐の夜。
定家 予感におののく。
式子内親王 伊勢にゆく。
歌の神がいる。
後鳥羽院 歌の神を生かす。
美しく生きる。強く生きるのではなく空や雲や日の出や夜や星を友として一つに生きる。
その実朝の全宇宙がある。
中国にゆこうとする。

193頁。
同じようにして、「浮舟」とはどのような女性であるかを推測する手掛かりがあるだろうか。

194頁。
女主人公は宮廷や幕府にも出入りの自由な、「浮舟」と呼ばれる男装の白拍子であり、同時にこの女性を琵琶の弾奏家、秘曲の継承者にすることも不可能ではない……

ここは辻佐保子さんの想像である。たぶんあたっているのだろう。

195頁。
「幻の舟」に乗る主人公たちは生身の人間ではありえない。

198頁。
「浮舟」のような実在と非在の極限を捉えようとする試みは、おそらく生命のあるあいだは実現不可能だったのかもしれない。

これだけのアイデアがあれば勉強の上、小説に取り掛かることは可能と思える。あるいは、これを読んで想像をたくましくするだけで辻邦生のもう一つの「小説」を読んだと同じことになる。

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Cloud LaTeXをもう一度始めた。アカウントは保存されていた。
https://cloudlatex.io/


2022年2月8日火曜日

ハイドンは定年退職後の年金生活になってやっと作曲を楽しんだらしい

ハイドンの曲が好きなのだが、彼の人となりさえもよく知らない。そこで子供向けの読みやすそうな本を探した。

https://archive.org/details/franzjosephhaydn0000summ/mode/1up?view=theater


ハイドンの奥さんが夫の仕事をぜんぜん理解せず、夫がせっかく書いた楽譜を焚き付けにしてしまうのが、残念でもあり笑えるところもある。偉人の奥様は損な役回りを演じることが多いのかも。
ハイドンが、60近くなり宮仕えを引退し年金をもらって、自分の好きなものを作曲できると喜ぶところも、大共感できた。ハイドンがますます好きになる。

***

明け方、神保町のPASSAGEに行った天然色の夢をみた。

確かに本の持ち込みでごった返している。なぜか息子も来ていて大きな本を上の棚から取り落とす。損傷はなかったので胸をなでおろす。自分の棚は整理用に使われているので納品しないで帰ることにした。Yuiさんはお急がしそうなので挨拶しないで帰る。無動力のスクーター(スケーター?)に二人乗りして帰る。こちらが帰り道なのか?東小金井という標識があり、なやむ。

***

「次世代デジタルライブラリー」であそんでみた。

https://lab.ndl.go.jp/dl/

まだβ版のようだし、検索できる対象は限られているとのことだが、素晴らしい。研究の入り口にはもってこいだろうし、読書好きな年寄りには福音と言える。長生きしていると良いことがある。コロナ禍の引きこもり生活が「楽しい」と思える。

義父の名前、「三浦宗太郎」で全文検索し、出てきたもののうち『東奥年鑑(1931)』を見ると……私の社会党好きの思いがよみがえる。



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午後は、辻邦生さんが死の直前に構想した「浮舟」の話、源実朝そのひとと宋に行こうとした彼の作らせた船の話を自分なりに調べる。斎藤茂吉や土岐善麿の書いた源実朝の本を国会図書館デジタルコレクションでななめ読みした。彼らは実朝の和歌の件に注目していて、「浮舟」についてはマジメに取り上げていない。もっと他をあたらないといけないか。

『背教者ユリアヌス』に通じるところがありそうな気もしてきた。 

実は「浮舟」を自分で書いてしまおうという内緒で不遜なのぞみも持っている。

「浮舟」については辻佐保子『辻邦生のために』(中公文庫)176頁を参照。

2022年2月7日月曜日

映画『愛は霧のかなたに』の主人公のモデル、ダイアン・フォッシーの生い立ちを知ろうと簡単な本を読んでみた

先日観た『愛は霧のかなたに』の主人公のモデルとなった霊長類学者ダイアン・フォッシー。その著書『霧のなかのゴリラ マウンテンゴリラとの13年』を、先週図書館で借りていた。まえがき、あとがきをチェック。本文もざっと見たが、知りたかったこと、なぜ34歳の子供向け作業療法士の彼女がアフリカの山中でのゴリラの生態の研究を志したのかが、本人の筆では十分に描かれていない。

他の本を先に読んで、アフリカに行く前の状況を知ろうと思った。Internet Archiveで易しそうな本を探した。『Dian Fossey Friend to Africa's Gorillas by Robin S. Doak』が良さそうなので、読んでみた。易しい英語で書かれているので読みやすかった。彼女のことを知りたい人にはおすすめだ。以下簡単に内容を紹介してみる。


サンフランシスコで1932年に生まれた。何不自由ない家庭だったが、子供の時両親が離婚し父とはその後会っていない。母親は裕福な実業家と再婚。身長が高すぎるというコンプレックスを持っていた。母親は取り合ってくれない。愛情の持っていき場所は動物に対してだった。でも犬や猫を飼うことは禁じられた。6歳の時乗馬を始めた。大学を出た後、34歳まで障碍を持つ子どもやサナトリウムの患者の作業療法士として働く。人付き合いは嫌いだった。1963年に銀行から8,000ドルを借りて、7週間のアフリカ旅行に出かけた。借金を返すために、この旅行で得た体験を新聞や雑誌に記事を書いた。

そして、またアフリカで野生の動物と暮らしたくなる。喘息という持病を持ちながらも、アフリカに戻り、ルポ記事を書いていたが、ルイス・リーキー博士と巡り合う。博士の勧めで世界で初めてマウンテンゴリラの生態研究をすることとなった。ゴリラの平和な生活に溶け込んだが、それを乱す密猟者とは果敢に戦う。

1983年に『霧のなかのゴリラ マウンテンゴリラとの13年』を出版。1985年末に何者かに襲われ殺害された。

『霧のなかのゴリラ マウンテンゴリラとの13年』はこれからななめ読みするつもりだ。

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トイレの換気扇が回らなくなっていたが、今日は少し体調が良くなったので、取り外して調べてみた。ホコリがたまりすぎたかと思っていたが、そうではなかった。肝心のモーターそのものが回転しなくなっている。交換せざるを得ないようだ。35年ぐらいたった古いものなので部品はなさそうだ。換気扇ごと交換することにする。電気工事の専門家に頼まないといけないようだ。がっかり。


2022年2月6日日曜日

5月には国会図書館デジタルコレクションで、『読書とは何か』にならった「狩り」型読書ができそうだ

 今日見かけたTwitterの記事。



これは嬉しい。

今までは、電車で出かけて送信対象の図書館に行かなくてはならなかったが、自宅で閲覧できるのだ。

子供のときに読んで胸を踊らせた本。たとえば、『金星の謎』、『ロンドン−東京5万キロ』、『欧州スクーター旅行』、『まあちゃんこんにちは』、『世界の船』などを読むことができそうだ。どれも、50年まえの実家の火事で焼けてしまったもの。当時の装丁も見られそうなので楽しいだろう。5月が待ち遠しい。

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『読書とは何か』を読み終わった。まだ一回目ではあるが。

「4.3【歩読】移動読書に終わりなし」。

224頁。

リズミカルな移動は歩行だけにかぎらない。車や鉄道での移動もまた快適な読書空間を私たちに提供してくれる。

このときに読む本も旅行に関する本がよさそうであると。たとえば、田山花袋の『温泉めぐり』をあげておられる。これは国会図書館DCで探してみたら、『温泉周遊』という名前で見つかった。内田百閒先生の『阿房列車』も挙げられているが、これは国会図書館内限定。でも文庫版は持っている。内田百閒の他の本は数多く図書館送信限定扱いで存在するので、こちらに期待する。

「4.5【未読】未来の境界知に触れる」が最後の節。

251頁。

本を読んでいるときに、それまでわからなかった”内側”と”外側”の”境界線”を超えたことに気づく経験はよくある。

これには完全同意。この時感じる違和感は良いことなのだ。気持ち良いだけが読書の醍醐味ではない。

エピローグで紹介されている青木正兒の『酒中趣』も5月には読めそうだ。

さて、この『読書とは何か』について、再読しながら、自分の意見も考えていきたい。今週末までには巻頭言の第一稿を書こう。「書く」(「打つ」)ことが理解への早道だ。


2022年2月5日土曜日

『読書とは何か』は読書の単なる入門書ではなくて「狩りとしての読書」の高度な入門書


 『読書とは何か』目次(河出書房新社のページから)

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309631479/

このうち「4.2【休読】途中で撤退する勇気と決断」まで読んだ。今日は孫が家に来てくれて、ずっとお相手をしてもらったので、読書は進まず。

昼過ぎにマンション敷地内の公園で遊んでいたら、15分ほどすぎたところで雪がちらついてきて、さすがの「風の子」も寒くなったらしく帰ろうと言い出した。保育園はここ1ヶ月休園だったが、かえってそのせいで十分甘えられて、体調は良さそうだ。



遊んでもらいながら『読書とは何か』について考えた。読書の入門書かと思って買ったのだが、よく考えると三中先生が単純な入門書を書くはずがない。第2章まではそのよう記述もあるが例として取り上げられた本は私には歯が立ちそうもない本だ。第3章以降は読書エキスパート向けの記述が続く。一読して「分かる」ような読書は、本当の読書(「狩り」)ではないとおっしゃっている。単純に読むだけではわからない本を、手を変え品を変えて読み解く(「狩り」)ときのダイナミズムを重視しておられるようだ。

したがって、今この本を読んで感じている違和感は、正しい「違和感」ということになる。途中で読むのをやめて、でも「寝ないで」考えることが必要である。この本で主に取り上げられている「専門書」はもちろんそうなのだが、文学書も同じなのではないか。一気読みした!と快感を得ているのは微笑ましいが、実は何を読み取ったのかがおぼつかないことが、少なくとも私にはよくある。好きな本は何度でも読みたくなるが、これは意識せず、本能的に本の持つ意味や価値を狩り尽くそうとしているのではないか。

それを教えるのに、『読書とは何か』というテーマで本を書かれる方のセンスが素晴らしい。ただしこの本は本屋さんや出版社泣かせの本かもしれない。皆が本の真の読み方に目覚めたら、無価値な本は売れなくなる。しかし、本当に価値のある本には適正な価格をつけて(もちろん高価だろう)も売れることになる。読者は本当に読むべき本を吟味して高くても購入して読むだろう。薄利多売とは別の世界がここに出現する。その世界への「入門書」という意味で、やはりこの本は読書の真の入門書なのだ。

2022年2月4日金曜日

少しでも理解できることの幸せ―『読書とは何か 知を捕らえる15の技術』読書中のひとつの感想

かなり疲れて夕方7時に帰宅。帰りの電車(混雑を恐れて緩行電車にあいた)では、『読書とは何か』の後半を読みながらも、意識が上滑りするような感覚がして、没入できない。忙しさは、私を読書の喜びから遠ざける。


そこで、昨日読んだ部分の一箇所を引用して「感想」を述べるだけにしたい。

168頁。(3.2【精読】読書ノートをつくりこむ の一節)

著者が思い描く理論の全体像を理解するためには読者のひとりである私自身もまた”追体験”しなければならないということだった。そして、究極の読書とは、読者自身がもうひとりの著者になることかもしれない。

これを裏返すと、「畢生の大作」を読んで「すべて理解」するということは事実上不可能な技であり、素人読者である私などにはほとんど不可能なことになる。もちろんここで無力感に囚われては駄目なので、数%でも「理解」できることを僥倖としてよろこばなければならない。「大作」の一端でも自分で理解できることは素晴らしいことと喜び、それを少しでも増やす努力をするのが私のできることだ。 

***

夜、60年ぐらいの間ずっと親友だった名古屋のS君から電話があった。数年間あっていないが、コロナ禍が去ったら、またあってよもやま話をしたいものだ。

読書という狩りもハードに行わないと成果は上がらない―『読書とは何か』を読み続ける

 電車は9時47分発急行、空いている。

さっそく『読書とは何か』を読み続ける。

第3章 「読書術(応用編)―冒険と危険は紙一重」に入った。基本編よりも難易度の高い読み方になる。確かに著者の言う通り、安全運転の読書だけでは識・知恵は得られない。知らない本を読まない限り前進はできないのだ。



***


中途半端なところまで読んでいるうちに目的地に到着。

昼から深夜まで孫と遊ぶ。ベビーシッターは体力が要る。


遅くなったので泊めてもらうことにした。風呂に入り皆で(孫以外)乾杯、爺冥利につきる。

2022年2月2日水曜日

『愛は霧のかなたに』は素晴らしい映画だった

8時 35.8度
毎日体温をはかるのはやめてもいいだろう。

18日以上も経ったので外出解禁とし、明日は孫の世話手伝いに出動する。また通勤読書ができそうだ。

***

今日は、自治会の回覧書類の印刷係として働く。200枚以上をインクジェットプリンターで印刷。結構きつい。作業用ビデオ映像が必要なので、昨日の『池波正太郎の銀座日記』で言及があった『愛は霧のかなたに』をプライム・ビデオで観る。心打たれる映画。2時間強だが、飽きない。映画の主人公のモデルとなった霊長類学者ダイアン・フォッシーの著書『霧のなかのゴリラ マウンテンゴリラとの13年』を、図書館システムで予約してしまった。来週読む時間が取れるかも。


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辻佐保子『辻邦生のために』を読み返した。最後に辻邦生が構想していた「浮舟」という実朝の未完の建造船の話を追いかけてみたくなった。


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夕方、PASSAGE書店からのメールが来たので、棚主としての初期設定と書籍の在庫登録を行う。時間がかかったが、なかなか楽しい。書店名は「BOOKS HIRO」とし、蔵書票を手作り。とりあえず『トーマス・マン日記』5冊を在庫登録してみた。価格が決められない。明日以降もっとよく考えて値段をつけよう。



もうすこしなんとかしたい蔵書票

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もう11時半だ。明日は早起きしないといけないので、もう店を閉めることにする。

2022年2月1日火曜日

全力で仕事をするために全力で食べた池波正太郎の『銀座日記』は涙なしに読めない

 ALL REVIEWS友の会内の有志メンバーでアーシュラ・K・ル=グウィンの『 文体の舵をとれ』の練習問題の回答を書いてオンラインで合評会を行っていますが次回(2月)第2回のお題は以下の練習問題です皆様もいかがですかやってみるととても楽しいですよ合評会の司会はまわりもちにしようとしていますさきほど回答用フォームを作成してメンバーにアドレスをお知らせしたばかりです

〈練習問題②〉ジョゼ・サラマーゴのつもりで一段落~一ページ(三〇〇~七〇〇文字)で、句読点のない語りを執筆すること(段落などほかの区切りも使用禁止)。テーマ案:革命や事故現場、一日限定セールの開始直後といった緊迫・熱狂・混沌とした動きのさなかに身を投じている人たちの群衆描写。

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『池波正太郎の銀座日記(全)』を読み直していたが今回は途中で(気の毒になるるという理由で)投げ出さずに最後まで読んだ。精力的に書いていた池波正太郎は「職人」として鏤骨の文章を書くためのエネルギー源として食事にも大いに気を使った。その「食べる」ことも彼の文章の材料となっていた。うまずたゆまず前進した池波正太郎もそれがゆえに60歳を越すと心身の不調をこの作品中でも訴えるようになる。頑張りぬいたが、部屋の中でも頻繁に転ぶようになり、平成2年春に入院、急性白血病という診断だった。病の進行は早く5月3日午前3時になくなったという。享年67歳。この『銀座日記」はその貴重な記録である。粛然として読み終える。

執筆のためよく泊まり込んだ「山の上ホテル」の天ぷらが大好物だったし、これが食べられるかが健康のバロメーターだったようだ。

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こちらは、やっと普通に食べられるようになった。これからは(も?)根を詰めたシゴトや食事は避けるようにしよう。

https://www.ghibli.jp/works/porco/#frame