2010年5月27日木曜日

とにかく机に向かう

 村上さんのエッセイにはレイモンド・チャンドラー式の執筆方法が紹介されている。とにかく机にむかって2時間は座っていろと。辻さんはトーマス・マンの方法、すなわち毎日朝9時から12時までは机に向かって仕事をする、について書いている。実際に辻さんもそうしたらしい。そのトーマス・マンの魔の山にはセテムブリーニ氏の魅力的な下宿の魅力的な立ち机が出てくる。ワインバーグ先生の「文章読本」にも書くための名案(迷案も)が満載されている。モンテーニュ様の塔型の書斎にも(寒そうなのだが)憧れる。ちょっとずつ真似してみている。
 書くべきものは小説やエッセイだけでなく研修のテキストや教案などたくさんある。とにかく質と量に関しあるレベルを達成しなければならない。仕事をするのは孤独で単調な仕事だ。でも続けているとライターズ・ハイ(ランナーズ・ハイの類推)みたいなものが襲ってくる。なんとなく麻薬的なところもある。(麻薬はやったことがないが。言葉のあやです。)
 別の話ですが、このようにほとんど世間とは交渉がなく(たまの講師稼業以外は)本をよみ何かを書き続けるという「生活」に実は昔から憧れていた。学生時代はそれで下宿にこもっていたし、会社員になってからも本当はそうしたかった。できなかったけれど。結局人間は自分のやりたい事をやりだすものであるようだ。

2010年5月20日木曜日

技法にはとらわれるな

 システム開発に関わる研修では多くの場合、ある手法を用いて研修を進め演習も行います。ここでの間違った態度は技法にとらわれて技法の使い方にばかり論議してしまうことです。似たようなことはプレゼンテーションでも起きて、プレゼンテーション画面に使われたテクニックにのみ感心してしまう。結果としてプレゼン技法は頭にはいったがプレゼンで言われたことは忘れたと言うことになってしまったりします。
 技法は手段にすぎず、それは論理を進めるためのツールにすぎません。演習である技法を使った図の書き方たとえば線の引き方がまっすぐがよいか曲線であるべきかといった些細なことに気を取られ、本筋のこの図の意味は誰も気にしていないといった状況はナンセンスそのものです。
 この傾向は物理学や天文学の世界でもありそうです。数式の操作にのみ習熟し、複雑怪奇な計算はできるが、その数式の意味することはよくわかっていないというケースです。数式は強力な道具ですが、単なる数学だけでは現実の世界は説明できません。
 テクノロジーが現代には必要不可欠ですが、テクノロジーだけでは十分ではありません。自分の思考を統合的に導くためのより深い思索が必要です。これには時間がかかりますが。

2010年5月19日水曜日

多忙なので勉強できないのではない

 忙しいから、余裕がないので勉強できないということをよく聞きます。いかにも最もらしいのですが、本当にそうなのかよく考える必要がありそうです。
 学生時代には勉強する暇はあったはずですが、勉強している人はどのくらいいたのでしょうか?一方、忙しい仕事の合間に新しいことを学び、一方では学んだことを他の人に伝えるための筆をとっている人はたくさんいます。そもそもそうでないと現代の社会は成り立ってこなかったでしょう。
 忙しいが学ぶ、余裕は気持ちの持ちようで生まれるという態度で暮らさないと、人生の最良の部分を味わわないうちに老いてしまいます。
 楽しいから学ぶというのが一番です。自分がいままで知らなかったことを知り、それによって人生が広々としたものに感じられるこの喜びをひとりでも多くの方に感じて欲しいものです。
 多忙なので勉強できないのではなくて、勉強しないから多忙なのです。ついでに言うと、業績不振だからといって従業員の教育をおこたる組織はさらなる業績不振に陥るでしょう。

2010年5月12日水曜日

研修理解のコツ-まず課題を調べよう

 はじめての事柄を学ぼうとする皆さん。どのように手をつけますか?基本を理解すべきなのでまず基礎事項をじっくり予習しよう...。これは大きな間違い(言い過ぎならば、時間の浪費)です。
 まず、テキストを後ろから見て、演習課題をみつけ、読んでみましょう。演習が解けない?当たり前です。ここで読み取って欲しいのは演習で何をやろうとしているかと、演習の状況とキーワードです。
 演習で何を問題としているか、これがこの研修の主題です。たとえば「Webアプリケーションの要件定義」。これがわかるということは研修の肝をつかんだということになります。次に演習課題の背景にある状況を読み取ります。これで、研修内容の背景と前提条件が理解できます。最後にキーワードを調べます。これはたいてい、設問で求められていることに相当します。「要件定義リスト」を書きなさいとあれば「要件定義リスト」です。
 これらを頭において、テキストの目次を調べます。テキストはどのような筋書きで主題に向かって構成されているかを見ます。ときには主題とはずれたこともありえますが、そこは講師の説明でストーリーがつかめるだろうと楽観視しておきましょう。あとは、キーワードがどこに出てくるかを調べたうえで、テキストを流し読みします。途中でむつかしそうな部分や単語がでてきても問題ありません。わからないことはまずは無視しましょう。全体の話の流れをつかむことが大切で、わからないことは99%テキストの後ろの方ででてきます。
 「学ぶ」ということは、単に知識を得てそれを一つ覚えで繰り返すことではありません。どのように考えるかを学ぶという姿勢が大切です。しかもわれわれは得た知識を活用すなわち現場で応用しなければいけません。このためにも「課題」からはいるという姿勢は大切です。将来的には皆さんの多くは、課題を抽出してその解放は誰か適切な人に依頼するという仕事の仕方が求められます。

2010年5月8日土曜日

「ツール」でものを語らないこと

 仕事の内容や研修(演習)の内容を言わないで、使用した「ツール」の名前で話をすませる事があります。 「今夜は「ユースケース図」を書き終えるぞ」、とか、「今回の演習ではエクセルの表をかいてもらいましょう」などなど。
 一見わかりやすいのですが、システム屋さんの陥りがちな落とし穴にはまります。きれいなユースケース図を書くことに熱中して肝腎の顧客の業務機能が正しく反映されていなかったり、エクセル表は罫線や色つけしてきれいに書けておりマクロのテクニックもすばらしいが内容のデータが間違って記入されていたり...
 プロ野球選手は打席にはいるときにはヒットを打とうと思っているのであって、バットを振るフォームを見せようとはしていません。ぼてぼての内野ゴロでも結果としてタイムリーになれば良いのです。
 したがって、「今夜はあのお客さんのこの業務に関する機能をうまくまとめて機能の一覧を作ろう」、とか「課題の前半の文章を分析して売り上げデータの変化を表すような表をかいてもらいましょう」と言って欲しい。
 これには上司なり講師が気を付けて、何のために仕事や演習をやるのかを言葉で表現させるようにし向けることです。#ところで今回もらった研修用のテキストには開発プロセスの説明図としてユースケース図やロバストネス図とかごまんと書いてあるがよわった。