2022年4月8日金曜日

一棚店主としての新商品開発と、個人の趣味の読書とを両立させることが大切

日記専門店(BOOKS HIRO)の店主としては、新しい商品を見つける必要がある。そこで伊藤整『伊藤整 日記1』(平凡社)を図書館で借りてきて読む。


「意外に」すらすら読むことができた。理由は、書いてあることが単純だから。原稿を書く話と、原稿料がいくら入ってきたかと、文人仲間や編集者たちと飲みに行った話、家族の病気、久我山にあたらしく家を立てた話、ベストセラー番付の話。『アシモフ自伝』を彷彿とさせる。そしてもっとリアル。

この日記は全8巻なのだが、全部読むべきかはちょっと迷う。このスピードで全部読めるなら、2週間位で済みそうなので読んでもいいかも知れない。当時の文壇事情がよく理解できそうだ。

単調さを破ったのは、1954年10月1日の記述だ。野尻湖に別荘を買ったのだが……

「図面を見ると野尻湖の家は九十何坪もある大きな家なり。堀辰雄のチクマのアルバムが着いたのを見ると、昭和十年頃堀は、レークサイドホテルと言ったこの家に客となったことありとて写真出ている。……」

というところ。これを読んでピンときたので、本棚の隅から堀辰雄『幼年時代・晩夏』(新潮文庫)を見つけ出してきた。「晩夏」という20ページほどの短編を読むと、病身の堀辰雄が夫人につきそわれて、この「レークサイドホテル」に泊まったことが書いてある。他には外人の少女二人連れのみが泊まっている、夏の終りの静かなホテルでの静かな滞在記だ。この文庫本は昭和43年、14版で90円。学生時代に読んでしみじみとした情感と夫婦の仲良い姿に憧れた。



こんなことがきっかけで、『伊藤整 日記』は全巻読破の対象候補となった。そして最近神保町で見つけた『堀辰雄全集』(筑摩書房)がまたまた欲しくなってきた。これを買うには、PASSAGE by ALL REVIEWSでもっと本を売って、全集がはいるスペースを開けなくてはならない。

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「文舵会」第3回の回答第一稿を書く。いままで一人称記述の文章ばかり書いていたが、今回は高校時代の恩師、地学の大池先生を登場させた。一年生の時のクラス担任でもあった。故人。

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