2022年2月10日木曜日

大佛次郎の『源実朝』は動かぬ唐船の姿を鮮やかに描き出す

大雪の予測が出ていたので、買い物は早めに3時頃でかけた。スーパーの上階にある図書館に行き、大佛次郎の『源実朝』と小川公代さんほかの『文学とアダプテーション ヨーロッパの文化的変容』を借りてきた。

【辻邦生の「浮舟」構想の追求プロジェクト】を続ける。

今日借りてきた大佛次郎の『源実朝』(六興出版)そのものは昭和53年出版だが、実際に雑誌連載小説として執筆されたのは昭和17年から昭和21年にかけてであったらしい。(村上光彦さんの「解説」による。)大佛次郎が海軍報道班員として南方に行ったため、途中中断した。そのため「新樹」と「唐ふね」という2つの中編小説の連作という形になっている。どちらも源実朝が「主人公」で、将軍になったばかりのときと、公暁に斬殺されるまでのことが描かれている。

当然、「唐ふね」を優先して読んだ。唐船の姿が鮮やかに描かれている。美しく大きく建造されるさまと、海岸で朽ち果てながら民衆の焚付ともなっていく姿。宋の医王山に行くことを望んで果たせなかったのが砂浜に擱座したままの唐船の姿に仮託されて描かれる。船が進水できなかったのは消極的なサボタージュがあったためだろうと推測する。公暁が実朝を暗殺するのを止められる人(義時)がいながら止められなかったことも同根だ。

実朝が歌会を催すが東国武者たちは作歌に苦労するというところも読みどころか。

現実の政治に心をくだく執権側の人々と、実朝の理想主義との温度差がこの物語のテーマだろう。

辻邦生はこの小説を読んだだろうか。これもプロジェクトの宿題として頭に入れておきたい。「吾妻鏡」を読んでいれば必要がなかったのかという疑問も。


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冬季オリンピック大会で、羽生結弦選手が痛い足を励まして、公式には初の4回転半ジャンプをこころみ、転倒。しかし4位入賞を果たした。彼の精神力の強さを感じる。

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