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2021年8月8日日曜日

丸谷才一『いろんな色のインクで』はこの本そのものを読むことがとても愉しい書評集

書評集の題名には趣向が凝らされているようだ。

鹿島茂さんの『歴史の風 書物の帆』という題名については以前書いた。

https://hfukuchi.blogspot.com/search?q=%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%AE%E9%A2%A8%E3%80%80%E6%9B%B8%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%B8%86

この書評集を読んで書いた以上の考察が、私を書評の勉強に駆り立てた。

前回読んだ丸谷才一の『蝶々は誰からの手紙』。蝶は三好達治の詩を思わせ、同じ詩でヨットの帆も連想させる。安西冬衛の詩も少し思い出す。

この書評集の冒頭の「はしがき」に並んだ様々な色のインク瓶のことが出てくるが、これは今回読む『いろんな色のインクで』に呼応する。そして帯の言葉にも「手紙」が登場している。なお、装丁はもちろん和田誠。「はしがき」のインクと筆記具の話も趣き深い。


本文冒頭は……

「I 書評のレッスン」

「藝のない書評は書評ぢゃない」

挑戦的な題名だが、丸谷さんの書評を知っている人にはそうでもなく、内容は丁寧な書評の書き方の手引きになっている。書評ファン必読。

その後の「実例」書評。ふたつ。

「マンゾーニ『いいなづけ』の書評を書き直す」

「カズオ・イシグロ『日の名残り』の書評に書き足す」

「II 74の書評」

スバラシイ書評満載。いくつも読みたくなる本が紹介される。たとえば、

「ミセス・ブラウンの配色」では『マティス・ストーリーズ 残酷な愛の物語』。

「辺境のキリスト教」では『聖者と学僧の島』。

「文学的伝説」では『失われた世代、パリの日々』。

ここまでしか読んでいないが、まだまだ読みたくなりそうだ。

「書評集」そのものが読んで楽しいことを再認識させてくれる、古本で安く買ったのだがすごいコストパフォーマンス。


2021年8月11日水曜日

装丁する本の裏表紙の上部にバーコードが印刷されることを和田誠は嫌った

 昨夜、寝る前の読書。米原万里『心臓に毛が生えている理由』(角川文庫)。

このなかの「花より団子か、団子より花か」の中のラーゲリ(旧ソ連の強制収容所)に入れられた女性たちの挿話。つらかったのは必ずしも寒さや空腹でなく、情報が遮断されたこと、本も筆記用具も所持できなかったこと。生き延びる工夫は記憶の中の「本」をお互いに声に出して「読む」ことだった。

「それからは毎晩、それぞれが記憶の中にあった本を声に出してああだこうだと補い合いながら楽しむようになる。かつて読んだ小説やエッセイや詩を次々に「読破」していく。そのようにしてトルストイの『戦争と平和』やメルヴィルの『白鯨』のような大長編までをもほとんど字句通りに再現し得たと言う。」

—『心臓に毛が生えている理由 (角川文庫)』米原 万里著 Kindle位置No.690/2727付近。

https://a.co/bHqtTyB


『収容所のプルースト』を思わせる。

https://allreviews.jp/review/2045

***

朝読書、『いろんな色のインクで』を読み続ける。

134頁。

『スプートニクの恋人』これは「ノヴルでなくてロマンスである」とのこと。

184頁。

薄田泣菫の『茶話』のこと。詩人は人生を二度生きる。泣菫は二度目の人生で随筆を書いた。
『完本 茶話』上中下を図書館で借りよう。解説も読みたいので。

210頁。

和田誠の『装丁物語』の話。(和田誠は広辞苑に従い「装丁」派。丸谷才一は大漢和辞典に従い「装釘」派)

裏表紙(カバー)にバーコードが印刷されることが多いが、デザイン上よろしくないと和田誠は抵抗したそうだ。さて『いろんな色のインクで』の装釘(和田誠)は? バーコードの位置は帯の上。


書評集で書評を読む時、初出媒体は何かを調べてから読むべし。文体を含め、丸谷才一のはがらりと異なる。

***


BGM。

"Emperor" Concerto
by Ludwig Van Beethoven; Artur Schnabel; Frederick Stock; The Chicago Symphony Orchestra
RCA Victrola (VIC-1511)

https://archive.org/details/lp_emperor-concerto_ludwig-van-beethoven-artur-schnabel-freder/disc1/02.01.+Concerto+No.+5+in+E-Flat%2C+Op.+73+(%22Emperor%22)%3A+II.+Adagio+Un+Poco+Mosso%3B+III.+Rondo%3A+Allegro+.mp3


Cantata No. 45 / Cantata No. 105
by Johann Sebastian Bach; Helen Watts; Agnes Giebel; Tom Krause; Ian Partridge; L'Orchestre De La Suisse Romande; Ernest Ansermet; Les Choeurs De La Radio Suisse Romande; Pro Arte De Lausanne
London Records (OS 25996)

https://archive.org/details/lp_cantata-no-45-cantata-no-105_johann-sebastian-bach-helen-watts-agnes-gi_0/disc1/01.01.+Cantata+No.+105+%22Herr%2C+Gehe+Nicht+Ins+Gericht%22.mp3

2021年8月5日木曜日

書評集『蝶々は誰からの手紙』(丸谷才一)の書評文章中の批評精神に脱帽



『蝶々は誰からの手紙』を朝の一時間(6時~7時)で本文を読みおえる。

306頁。

村岡素一郎『史疑』(民友社)の話が出て来たので、国会図書館デジタルで眺める。この本の末尾にある民友社の宣伝頁で紹介されている本と著者のラインアップがすごい。福地桜痴の『幕府衰亡論』もある。

313頁。

「兼ねる辞書」で、丸谷才一の机の回りの本の様子がわかる。その中で『日本国語大辞典』に自分の言葉に関するメモを貼りこんで、スクラップブックとしても活用しているという話がさらりと書いてあって凄い。

323頁。

「読書という快楽への誘惑者」で向井敏が紹介されている。「読書という快楽への誘惑者として最高の人」と。「毎日新聞」「週刊朝日」「文學界」「東京人」ヘ寄稿。向井敏の言葉、「数百字の渺たる書評が大冊の評論にはるかにまさる『批評』を蔵している例は数知れない」も紹介。向井の方法の特質は次の通りだそうだ。

1.格式や序列を無視。差別から遠い。
2.ディテイルを大事にした。
3.大局観。(教養と博捜のたまもの)
⒋新人を見出す眼力。(鹿島茂、村上春樹、池澤夏樹など)
まとめると「好きこそものの上手なれ」。

向井敏の『残る本 残る人』を注文してしまった。

https://allreviews.jp/review/2352

344頁。

「考へるための道具としての日本語」の一節。

「言語には伝達の道見という局面のほかに、思考の道具といふ性格がある。人間は言葉を使ふことができるから、ものが考へられる。言葉が寄り添はなければ、思考は単純になつたり、しどけなくなつたりする。その思考の道具としての日本語についてはちつとも配慮しないのが近代日本の言語政策であつたし、言語観であつた。」

355頁。

「いま日本経済はあやふく、政治はひどいことになってゐる。」

2002年7月31日朝日新聞夕刊の記事だがこれも現在書かれたと言っても通用する、いや現在の方が切実と思えるような文章である。丸谷才一の先見性。

末尾に「初出一覧」が掲載されている。ここは重要。その後に「書名索引」と「著者名索引」と「訳者名索引」があり便利。

書評の初出媒体の主なところは、

・毎日新聞(あたりまえか)

・朝日新聞

・日本経済新聞

書名索引には100冊弱の本。

奥付けの後ろに出版社の本の紹介付き宣伝のページがあり、これを読んで、『いろんな色のインクで』を注文してしまった。

***

新聞記事横断検索サイトを一つ見つけた。私は大昔にNiftyのIDを取っていたのですぐアクセス可能だった。記事のダウンロードには料金が必要。

https://business.nifty.com/gsh/RXCN/

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新型コロナワクチン(ファイザー社製)接種2回目。近所のかかりつけ医のK内科クリニックで受けた。いまのところ副作用なし。解熱剤はこの春同じクリニックで処方してもらったものがあるが使わなくて済みそうな気がする。希望的観測。

2021年8月17日火曜日

『モンテーニュ私記 よく生き、よく死ぬために』(筑摩書房)、もったいなくて少しずつ読む

朝読書。しばらく読むのを中断していた『モンテーニュ私記 よく生き、よく死ぬために』(筑摩書房)を読む。

余生を過ごし始めたモンテーニュは無為に悩む。そのなか……(21頁)

書くという仕事は精神を一時の変調から救って、それを正常に戻すのに役立った。

著者(保苅瑞穂さん)は研究者ではない。だからこそ、(25頁)

モンテーニュという人間の魅力について、語りたい。

この本の魅力の源泉はここだ。

26頁。

わたしはその人(モンテーニュ)に本の中で偶然巡り合った。

355頁。あとがき。

書くのに10年かかったこの本は、『エセー』の書評と言っていいのだが、数日で書いた書評と同列にはできないだろう。まあいろいろな「書評」があっていい。

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来週のメルマガ巻頭言のラフ案

対象本 『いろんな色のインクで』(丸谷才一の書評集)

発行年奥付2005年 装「釘」 和田誠 「ひとりの本好きが、本好きの友だちに出す手紙」と帯にある。

丸谷才一が書評をこのように捉えている。

ラーメンまたはいろんな色、書評集の編集にも丸谷は長けている。

丸谷の書評はこの時代の書評の歴史そのもの、あるいは丸谷が日本の書評を作ったと言える。

書評の基礎勉強には、この本を読む、この本の書評(鹿島さん)を読む、『歴史の風…』のARでの紹介記事と、堀江さんの書評を読むと良さそう。

ぜひ、書評読みになり、自分で書評を打ち、書評の開く世界を楽しんで欲しいと「自分に」言い聞かせる。この本いいねと同様に、この書評いいねもみんなと言い合いたい。

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今日は『山といへば川 』(中公文庫)  1995/9/1を注文しておいた。丸谷才一の書評集。

その丸谷才一の大野晋との対談(書評)、『光る源氏の物語』を午後、読み続ける。興が湧き、150頁くらいまで一気に読む。

丸谷才一が紫式部を1人の作家として扱い、縦横に批評するのが面白い。「源氏物語」と紫式部が身近に感じられる。

そして、161頁のアーサー・ウェイリーの英訳『源氏物語』がイギリスで好評を博したわけは、ヴァージニア・ウルフなど知識人たちが人気者プリンス・オブ・ウェールズのゴシップを思い浮かべて、理解しやすかったから、と言う記述にはなるほどと思った。



2021年8月7日土曜日

『井上ひさしの読書眼鏡』(中公文庫)はインパクトのあるマジメな書評集

今朝のTwitterでジーンズの『神秘の宇宙』が話題になっている。

ジーンズ鄕のことはトーマス・マンや戸坂潤との関連で少しブログに書いたので、今朝のいくつかのTweetを面白くよんだ。ウルフの『波』や『群像』今日発売版をゆっくり読んでみよう。

https://hfukuchi.blogspot.com/search?q=%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BA

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孫を預かる土曜日。ワクチン接種の副反応が……などとは言っていられない。さんざん遊んで夕方6時半の電車に父親ごと乗せる。孫は来てよし帰ってよし。

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この眼鏡の絵がいいね! カバーデザイン:多田進さん

昨日読んだのが『井上ひさしの読書眼鏡』(中公文庫)。読売新聞の書評欄に2001年から2004年に書いた書評と、米原万里展の図録に2008年に書いた全著作書評。藤沢周平の追悼文が掲載されている。この本の井上ひさしの書評はどれも単なる本の話題だけではなく、現代社会の持つ問題点を深くえぐる内容である。井上ひさしはつくづく誠実な人間だったのだと思わせる。

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一昨日注文した『いろんな色のインクで』(丸谷才一 マガジンハウス)が届いた。最初のインタビュー記事の題名が「藝のない書評は書評じゃない」と振るっている。楽しみだ。明日のブログで一部でも速報する。