2019年12月11日水曜日

『モロッコ革の本』にはルリユールのこと以外に重要なほのめかしが書き込まれている

『モロッコ革の本』(栃折久美子 1975年 筑摩書房)を、再読(3回目?)。

書誌データ:
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000001239395-00

ルリユール以外のところが今回気になった。114頁で、アナキスト石川三四郎のブリュッセルでの足跡(ポ−ル・ルクリュとの交流)を尋ねるところが書いてある。栃折さんは親しい人が歴史小説を書いているから、と言っているのだが、しばらくは、「親しい人」が誰だかわからなかった。森有正は歴史小説など書いてないし……と思ったりした。いろいろ、調べるとどうも、これは臼井吉見でないかと思いはじめた。栃折さんは筑摩書房の編集員をやっていたが、そのころ臼井吉見は顧問をやっていたはずだ。

124頁。「石川三四郎はその女友達モチヅキ・ユリ(留学生)と共に再訪」と書いてある。このモチヅキ・ユリとは、望月百合子のことなのだろう。

128頁。栃折さんは「ある短い小説のモデルになったことをきっかけに、文章を書く気を捨てました。」と(多分)臼井吉見に言ったという。「その小説の題材となっている私のつくった魚拓……」とも書いておられる。
ここは、いままで読み飛ばしていたが、今回偶然に観たビデオで、意味するところがわかった。ビデオはNHKが最近作ったドラマで、Youtubeで観ることが出来る。
https://youtu.be/EDO-PC1SgnU

原作は室生犀星、劇中の年老いた小説家(原田芳雄)のモデルは室生犀星だろう。尾野真千子の演じている雑誌編集者はきっと、栃折さんだ。ドラマでは老小説家の代わりに編集者が病気になる。実際には、編集者でなく、装丁家だったのだが。

Wikipediaを見ると、室生犀星の項に、
「『火の魚』中央公論社、1960年 - 『蜜のあはれ』を装丁した栃折久美子をモデルとした小説」
とある。ドラマで小説家が書いていたのは『蜜のあはれ』らしい。筑摩書房をやめてフリーの製本家になった栃折さんの最初の装丁本。

そもそもは、ルリユールを調べたかったのに、横道にそれたようだ。でもこの回り道が楽しい。仕事現役時代には、回り道を楽しむ余裕がなかった。

***

夕食には、親子丼を作った。いままでやっていたように水分を多くして煮てはいけない。鶏もも肉と玉ねぎを軽くいため、そこに醤油、酒、みりん、砂糖、だし顆粒をいれて、味がついたら卵を回しかける。うまくできた。


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