2021年5月4日火曜日

どうしても忘れられなくなるのが名文だ



今朝、これを読んで、「静かな朝で気持ちいい 夏の匂いも微かに感じられる」のところで、なにか懐かしい思いにとらわれた。この雰囲気の文章をどこかで読んだことがある。たしか、ヘミングウェイだった。本棚から捜しだした文学全集の端本をひっくり返して、ようやく見つけ出したのは、『日はまた昇る』の第5章のはじめのところ。うまく見つけ出せて、私も夏の早朝のように気分が良い。まだ5月なのだが。せっかくなので今度は忘れないように引用しておく。

翌朝、ぼくはコーヒーとブリオッシュをたべに、スフロ街のほうへ大通りを歩いていった。晴れた朝だった。リュクサンブール公園のマロニエの木は花ざかりだった。暑い一日早朝らしいさわやかな気分があふれていた。(大橋吉之輔訳 筑摩書房 世界文学全集60 30頁)

原文もちょっと画像で引用させていただく。

https://archive.org/details/sun_also_rises/page/n51/mode/2up

短い一節だけで、夏の朝の爽やかさを見事に描写したヘミングウェイ(とその訳者)の名人芸がすばらしい。一度読んだだけなのに、この文章は記憶の底に染み込んで消えない。

覆麺 智のマスターもヘミングウェイに劣らない文章家であることがわかり、こちらにも敬服してしまった。またぜひ、冷やしラーメンを食べに行きたい。

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