2017年5月23日火曜日

『屠殺場5号』を読んで色々考えた

 良い本の条件は以前考えた。「他の本を一冊以上紹介してくれること」である。直接書名を言及してあってもいいし、挟み込んだ広告に紹介があってもいい。潜在意識に働きかけて、連想で他の本を想起させてもいい。

 これを拡大解釈してもよかろう。『屠殺場5号』は広い意味での良書である。カート・ヴォネガット・ジュニア(KVJ)の『SLAUGHTERHOUSE-FIVE』(1969)を伊藤典夫さんが訳し、1973年に早川書房が出版した。



 KVJは1945年のドレスデン空爆のとき、捕虜として現地に居たのだろう。その前後の恐怖体験を20年以上経って、やっと小説にした。直接的には書けなかったので、SF小説仕立てにしたと思われる。

 ドレスデンには10年以上前に観光で行ったことが有る。爆撃でバラバラにされたマリーエン教会の復興はほとんど未完成だった。崩れ落ちた石のかけらが拾い集められ、番号をつけて棚に並べられていた。その後、原型に近く修復されたと聞く。

 無差別爆撃はその後、東京などにも行われ、広島長崎は原爆でやられ、ベトナムもやられ、イスラム諸国も…

 KVJと略したが、1976年以降はジュニアはとったので、KVだ。



 本の裏扉に「1976.2.22 渋谷大盛堂」とメモ書きがある。このようなメモは私としては珍しい。
 40年前に読んだはずで、たしかに全体の雰囲気と、断片的な記述の記憶はある。しかし、細部のプロットや言い回しやジョークはまったく覚えていない。なので、結構楽しめる。

 こうなると、昔購入した本を、改めて読み直すのも悪くないと思えてきた。経済的理由で新本はなかなか買えないが、買えなくても困らない。昔の本を引っ張り出して読めばいい。自分の好みに合った本を選ぶのは難しいが、昔の自分に選んでもらえれば確実だ。

 良い本の定義をまたひとつ考えた。
 「読み直しても再発見がある本。」

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