2019年8月7日水曜日

『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』は年寄りには面白く懐かしい内容だ


『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』(田邊園子 2003年 作品社)を読了。坂本一亀は河出書房(新社)の名物編集者。田邊園子はその部下だった。坂本は軍隊経験者で大変なワンマンで、部下はもちろん、作家も平気で叱り飛ばしたらしい。職場はブラック。残業はさせるが、手当などつけない。本人も同じなので、部下は非常に困ったらしい。彼の目的は、読者に良い本を届ける、それだけ。あまりにも正しい生き方なので、文句のつけようがなかったようだが、周囲は苦労するし、自分も体をこわす。

彼が手掛けた本の著者の、作家たちがたくさん出てくる。印象に残ったのは、三島由紀夫、中村眞一郎、小田実、辻邦生。小田実のベストセラー『何でも見てやろう』は、坂本が書かせ、しかも三度も書き直させた。辻邦生の出世作『夏の扉』もやはり、三度書き直させたらしい。『辻邦生作品 全六巻』の「夏の扉」収録巻の折込付録をみると、やはりそのことが出てくる。辻邦生は人柄がいいので、おかげで良い作品になったと感謝している。他の作家はたいてい、喧嘩している。ただし、弔辞などでは、坂本に感謝していたらしい。

これに目をつけて中村に書かせたのか

これこそ、河出書房新社の…
坂本龍一は彼の一人息子だった。そして、田邊にこの「伝記」を書いてくれと頼んだ。坂本一亀は、資料提供は断ったが、埴谷雄高の後押しでなんとか書き終えた田邊の原稿には眼を通してくれたとある。これも編集者の眼で見たのだろう。

巻末に年表がついている。年ごとに、その年の売れ筋作品が載っている。これをざっと眺めたが、1974年までの作品は読んだことがないものもあるが、ほぼ知っている。一転して、1974年以降、すなわち、私の就職以降の作品はほとんど知らない。会社員に徹しちゃったわけだが、今思うとこれはいかにも残念だ。大げさに言えば、失われた40年。最近、復活したわけだが、このブランクは大きい。取り返しがつかない。
何かを得るためには、何かを捨てなくてはならないのが人生だ。

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鹿島さんと原さんの「バンド・デシネ」のイベントの、トークの文字起こし、担当分(15分)を、午前中で一応最後までこぎつけた。あとは、手直しだけ。
聞いていただけでは分からなかったことが、分かるようになった。いい勉強になった。


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夕方、健保組合に扶養者状況届けを送った。そのために、昼前に、Jの非課税証明書を市役所(分室)に取りに行ったが、暑くて難儀した。帰りにアイスキャンデーを買ってきて、シャワーを浴びたあと食べる。まあ、よく言うと、夏の醍醐味。

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