2019年10月29日火曜日

『きのこのなぐさめ』を読めば喪失感による苦しみが軽減されるだろう



『きのこのなぐさめ』(ロン・リット・ウーン 枇谷玲子・中村冬美訳 2019年 みすず書房)を読み始める。実は最近話題の本だと言う理由だけで読み始めたが、たちまち引き込まれた。午前中で100頁。そして、掟破りながら、最終章も先に読む。

作者はマレーシア生まれの社会人類学者で、ノルウェイで最愛の夫を急病でなくした。喪失感のなかで、「きのこ」に出会う。なぜきのこの採集か、は愚問で、たまたまであろう、というよりきのこが傷心の作者を癒やすために近づいたというのが、正解に近い。

作者はその後「公認きのこ鑑定士」になる。今日読んだのは最初の試験に受かる、そこまで。

「きのこ」を学んで、その精妙な世界の素晴らしさに目覚める過程と、夫をなくした喪失感が癒えていくまでの物心両面にわたる大変な過程が、交互にそして縄をなうように入り混じって語られる。語り口に、悲痛ながらもユーモアが感じられるのは、作者の人柄のおかげだろうし、社会学者として、マレーシアとノルウェイの文化を比べながら書いているからだし、なによりも、「きのこ」という新しい世界に踏み出しているからだ。

きのこの写真やもっと多数の名称がでて来る。昔買ったきのこの図鑑があるので、照らし合わせながら読む。趣が深くなる。

枇谷さんの翻訳は、きっと困難を極めたと思うが、見事に、作者の「なぐさめ」感のある文体を日本語化されていると思う。困難ながらも作者に共感しながら訳されたことと思う。中村さんの約した箇所にはまだ到達していないが、楽しみである。

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『量子の海…』も、少し読み進めた。大学院最後の年。同輩の学生たちに量子論の連続講義を行った。ファウラーも聴衆の一人として出席。自分を追い越した弟子についての感慨もひとしお。(130頁)

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ALL REVIEWSサポートスタッフの仕事を今月はこれまでサボっていたが、書誌編集のチェックを少しだけやった。あと、二日間、もう少しやろう。

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