2020年9月15日火曜日

小金井良精のようにのんびり屋のほうが学者に向いている

星新一の『祖父・小金井良精の記』を半分読んだ。

変な題名なのだが、これは最初の方で星新一が説明している。小金井良精は星新一の母方の祖父(ついでに言うと母方の祖母は森鷗外の妹喜美子)で、若き日のドイツ医学留学から晩年まで欠かさず日記をつけていた。それを探し出して、テーマごとに読みながらこの本の材料としている。この本は星新一が書いたものか小金井良精が書いたものか、判然としないことを題名の曖昧さで表している。

星新一らしく、短いストーリーの連続で書いている。そのせいもあり、非常に読みやすい。相当に無味乾燥であろう日記に忠実に書きながら、小金井良精と周囲の綺羅星のような人々(含む鷗外)が、生き生きと動き回る。

長岡藩の悲劇のなかで子供時代を過ごした小金井良精は、のんびりしてはいたが学問に頭角をあらわす。東大医学部(の前身)を首席で出て、ドイツ留学に行き、腎臓の弱さをかかえながら、ベルリン大学で助手として教鞭を取るまでになる。そのころドイツにやってきた森林太郎にも会っている。帰国して東大医学部の教授になる。賀古鶴所の紹介で鷗外の妹と結婚。正確には再婚。賀古鶴所からドイツの鷗外に承諾を求めると、即座に電報で認める旨の返事が戻ってきたという。

鷗外を追って来日した「エリス」の説得にもあたったようだ。

小金井良精は鷗外とは違い、医学の仕事一筋。解剖学を教え、骨の研究も行う。三度目のドイツ訪問で購入してきた計算尺で研究の計算を夜中までやって倦むことがない。

六十歳あたりの所まで来たが、今後小金井良精の生涯がどのように展開するのか(しないのか)が楽しみだ。


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予定日を過ぎたが、息子の配偶者は産院を出たり入ったりしている。相当のんびりした初孫が生まれてきそうな予感。ともかく楽しみである。コロナ禍のため産まれてもすぐに面会はかなわないだろうが、楽しみを先にとっておくと考えよう。

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