2021年4月21日水曜日

『天体観測に魅せられた人たち』の科学解説はお見事


『天体観測に魅せられた人たち』を読み進める。この本の著者エミリー・レヴェックさんは、ポピュラーサイエンスの本を初めて書いたということを、翻訳者の川添節子さんがあとがきで述べておられる。

一般の人向けに科学を解説するのは難しい。書く側に相当な知識と経験がいるのだ。やさしく書こうとすると冗長になる。かと言って説明を省略すると読者がついていけなくなる。高度な知識がなくても、文章の力でわかった気にさせるワザが必要になる。理想的にはアシモフとクラークの中間ぐらいの微妙なところを狙わなくてはならないだろう。

エミリー・レヴェックさんの文章はその理想に完全に達しているとは、言えない気がするが、若いに似ず、相当なところまでは行っているような気がしてきた。たとえば、182頁の、「補償光学システム」の解説は、私は多少「勉強」したので理解出来たような気がするが、一般の人にも(生き生きとした理解は難しいにせよ)納得できるレベルの説明が工夫されている。

「補償光学システム」で補償できるのは、大気のゆらぎによる天体像の乱れだけで、大気そのもののもつ光の吸収に対抗するには、望遠鏡を地上から持ち上げなくてはならない。そこで、183頁以降の、「アタカマ砂漠になぜ」望遠鏡を作ったかとなるし、「空中天文台」のように望遠鏡を航空機に載せ、気球につるし、ロケットに搭載し、ひいては人工衛星にしてしまう。このストーリー展開と、自分の経験を織り交ぜた語り口は秀逸だ。とくに、207頁以降の「オーロラ!」を観るシーンは感動モノ。そして211頁以降の、「皆既日食:につなぐ。日食観測に伴う過去のロマンス(例:エディントン他)は天文ファンならずとも面白い。

残りは80頁。明日読み終えるだろう。再来週の週刊ARの巻頭言でこの本を取り上げてみたくなってきた。

この書評も参考にして書きたい。

https://allreviews.jp/review/978


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「Internet Archiveで何でも聴く」プロジェクト。
LPレコードの宝庫があり、自分のコレクション(よりもちろん100倍多いのだが)とごっちゃになってきた。

Pres And Teddy
by The Lester Young-Teddy Wilson Quartet
Verve Records (MG V-8205)



Moonglow
by Artie Shaw And His Orchestra
RCA Victor (LPM-1244 / LPM 1244)




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