2016年10月27日木曜日

作家としての出発はたいへんだった、らしい

三笠書房版クローニン全集十五巻『人生の途上にて』の270ページ以降に、クローニンの作家としての出発がほろ苦いユーモアに包まれながら記述されてます。30代なかば、成功したロンドンでの開業医の地位を、十二指腸潰瘍の発病を期に、なげうってスコットランドの片田舎に引っ込み、屋根裏部屋で始めての小説執筆に四苦八苦する。

 「私は技巧にたいする自負もなく、文体や表現形式についての知識もなかった。かんたんな叙述のむずかしさに、私はよろめいた。一つの形容詞をさがすのに、何時間もついやした。紙がまるでクモの巣のようにみえるほど、私はなおしになおした。それから、それを破りすてて、またあたらしく書き始めた。...
 その後の三カ月間、あのうるわしい夏の間じゅう、ほかの者が楽しく遊んでいるあいだ、私は机に自分をしばりつけたまますごした。」

 苦労のすえ夏の終わりには書き上げ、ロンドンの見ず知らずの出版社に郵送する。諦めかけたころ、出版社から出版の前金の50ポンドが届いた\(^o^)/


 このブログを書くため、「納戸部屋」から、この本をサルベージしてきた。神保町の小宮山書店のガレージセールで、つまりホコリをかぶったまま3冊500円で、かってきたもの。50年ぐらい前の本だがホコリを払えばまだ十分読める。密林だともっときれいな古本が手に入れられそうだ。でも昔の雰囲気はガレージ本の勝ち。
 1950年代、60年代当時は日本でのクローニンのブームだったような気がします。通俗的だという人もいますが、読者に感動を与えるストーリーで、彼の多くの本はすでに戦前から世界的ベストセラーとなり、映画化・テレビ化も多くされました。

 クローニン先生は、この記述のあとは、この自伝本で、執筆そのものの苦労はいっさい述べていません。円滑だったのか、苦労話は書きたくなかったのか。おそらく後者でしょう。

 Open Libraryでこの本の英語版が無料で借り出して読めます。メールアドレス登録必要。貸出は14日間。





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