2016年10月31日月曜日
小ネタでもたのしい読書のきっかけになる
ディック・フランシスの本を数冊「発掘」しました。
先日の記事で彼の奥様のパイロット修行のきっかけとなった小説『飛越』を、読もうとしたら、冒頭の記述に「メカノ」が出てきた。主人公があやしげな馬匹空輸会社に就職を頼みにいくところ。会社は港に面した建物にある。(1976年 ハヤカワ・ミステリ文庫版 19ページ)
「私から顔をそらせて窓の外を見つめていた。河は引き潮の底近くになっている。夕闇の迫る向こう岸で、クレインが赤いメカーノ式おもちゃのように並んでいる。」
メカーノ式おもちゃとはこんな奴です。メカ好きの男の子なら大好きになってしまう。でもちと高価。
アーサー・クラーク先生の素敵な回想録『楽園の日々』(2008年 ハヤカワ文庫版 220ページ)によれば
「わたしは、一九歳という重要な年齢に近づいても、これといって人生に大望を抱いた記憶がない──SF雑誌を読み、手製の望遠鏡で月を眺め、メカーノ(当時までに発明されたもっともすばらしい玩具)で遊ぶこと以外は。
孔の開いた桁と帯板、角ブラケットとフランジ、棒とクランク、ねじ釘と車軸、ずらりと並んだ歯車を備えたメカーノのセットを使うと、およそ考えうるかぎりのものがすべてつくれた。」
ともかく、あこがれのまと。だが、彼は少し安いセットで我慢したらしい。このあとに、40年後に弟から高価なセットをプレゼントされて、大喜びしたとも書いてあります。
「メカーノ」については、2001年に『楽園の日々」を読みながら、少し調べていました。
フランシス先生もメカーノで遊んだのか、きっとそうだろう、ではいくらのセットを買ったのかについて調べたいがと思い、「Meccano Dick Francis」でググってみたところ、『飛越』の原著「Flying Finish」の8章の文章がヒット。
「A Finnish freighter, come up on the flood, was manoeuvring alongside across the river under the vulture like meccano cranes.」
この原文の最後の句の翻訳は(上掲書 132ページ)を見ると
「はげたかのような起重機」となっており、「meccano」を訳していません。
日本人には(当然菊池光先生も)あまりなじみがないおもちゃの名前なので、訳が省略されたと思います。そのほうが訳文がひきしまるし、こんなことをほじくる読者は無視しても許されるのでしょう。
ともかく、ちょっと興味を持ったことを、少し(一時間くらいでした)調べるだけで、面白い調査ネタが出てきます。まだ、フランシス先生のセットの値段がわからん(^^)。調べよう。
ところで「メカーノ」の雑誌も出ていたのですね。そして、一時日本の資本も入っていたとか。これもひまつぶしの調査対象になる。よきかなインターネット情報時代\(^o^)/
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