小林雅博さんの博士論文、
『森有正研究 : 「人間」と「思想」の意味、および「日本人の思想」との関連性』
約160頁を一日かけて読了。
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わかりやすい記述で、森有正の全体に目を配ってあり、読んでよかったと思わせる。これを参考にして、自分なりの年譜を作ってみた。西暦年号と、満年齢、主な出来事、著書を項目にしてみた。著書のところはまだ未完成だ。
森有正は一年のつもりで留学したが、ヨーロッパ文明の本質を自力で理解しようとしたため、日本に帰れなくなった。空海は日本に密教の教えを伝えるという使命感で戻ってきたが、森有正は自らを作り直そうとした以上、すぐには戻れない。結局1976年に戻ろうとしたところで倒れた。若いときに胸を患ったし、パリでの食うや食わずの学究生活がたたったのだろう。
この間、東大助教授の職をなげうち、アルバイトをしながら「仕事」にはげむ。日本ではエリート学者として業績もあげたが、パリでは一介の学徒として「仕事」をはじめた。
森有正のエッセーにはファンも多いが、文学的に評価はするものの、彼が苦闘しながら自分のなかに「文明を担える個人」を確立する稀有な過程を書いていることに気付いていない。昨日までの私がその好例だ。ここを気づかせてくれた点で、この論文はありがたい。読んでよかった。
読み終わった後、森有正の『経験と思想』(岩波書店)と、『生きることと考えること』 (講談社現代新書)を古本でだが注文した。図書館にはない(😡)。ともかく届くのが楽しみだ。明日は『どこへ向かって死ぬか 森有正と生きまどう私たち』を斜め読みする。
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