2016年11月2日水曜日

ぜいたくな脚本家生活か清貧の作家業か

昨日ご紹介した、
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(ブルース・クック, 手嶋 由美子 著)
の後半を読み終えました。面白い、そして今年夏に翻訳出版された本が、Unlimitedで読めるのは、年金生活者には喜ばしい\(^o^)/

前半は貧しい生い立ちと出世への苦闘、脚本家としての成功と、共産党員となり赤狩りにより投獄されるまでを描いていました。

後半は、出所後の闇の脚本家仕事の成功、そして戦いの末の名誉の回復、作家生活へのあこがれと挫折を書いています。

 彼の強烈な性格により、敵も多かったが、なにしろ脚本を書く腕が確かで仕事が早く、友情に厚いので味方もおり、本名は出せないにしても他人名義で多くのヒット作脚本を書き、いっときは田舎に大きな牧場付きの家を買い取って、家族のみで隠れるように仲良く暮らします。

徐々に彼の名誉も回復されていきます。私の手元にたまたま『ローマの休日』の1988年製のVHSビデオと2003年製のDVDがあります。
 1988年のテープのパッケージの表示は、
ScreenPlay by IAN McLELLAN and JOHN DIGHTON Story by IAN McLELLAN

 2003年製のDVDでの表示は、
ScreenPlay by IAN McLELLAN and JOHN DIGHTON
Story by DALTON TRUMBO
 となっており、彼の名前がでてきます。

 『トランボ』によると、IAN McLELLANは彼の友人でやはり脚本家、代理人となって4万ドルのギャラもパラマウントから受け取ってくれたそうです。

 そして、トランボは後の自らの監督作『ジョニーは戦場に行った』の原作である名作小説を書きますが、小説の完成は久しぶり。修行時代からいろいろなものを書いてきたが、彼は本来作家として心ゆくまで書きたかったのであろうが、豪奢な生活を家族とともにするには、そして、共産党員として迫害を受けながら家族を守るには、脚本を書き飛ばすしか方法がない。そのジレンマが大いにあったとしてあります。

 『トランボ』の著者は、その書きぶりからすると、トランボに純粋なでも清貧な作家生活を送ってもらい、名作をもっと書いて欲しかったと思っているようです。脚本家よりは作家のほうがステータスが高いと思い込んでいるふしがある。

 ここは難しいところですね。他人はなんとでも言える。
 トランボのような有能な人物は、映画界でも政治の世界でも皆が必要とし頼りにしただろうし、彼の男気からすると、人に頼まれたらイヤとは言わず、頼まれたことの倍を実行してしまったようなので...

 頼りにされない私は、寂しいけど、トランボ(70歳で1976年に死亡)よりは長生きできそうです。

 トランボに関する一人プロジェクト、今後の展開はどうするか?メモ。
 ・一緒に赤狩りにあった人々や、支援した人々(有名人ではトーマス・マンやチャップリンやアインシュタインなど)のその後を調べる。
 ・ハリウッドでの脚本家と、そのなかの元作家・将来の作家の生きざま(『追憶』参考)。
 ・脚本の書き方、米国と日本。
 ・米国での非寛容の歴史。
 ・映画のタイトル。クレジットや、エンドロールの研究。マニアック過ぎ?
 ・エトセトラ、エトセトラ。


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