『トーマス・マン日記』を読み進める。
隙間風の入る家に不満を述べながらも、なんとか『欺かれた女』を書き終える。作家魂。
1953年3月1日、エルレンバハ。
カリフォルニアの「家」への郷愁が続く。
3月2日。
きょう入浴。ぐずぐずしながら書き進める。ラジオでセザール・フランクの交響曲を少し聴く。『ルーディン』を読み終える。小さな窓際の席は晩になると冷たい隙間風のために座ることができない。
3月3日。
城館訪問の場面を少し書き進める。『父と息子』。
3月4日。
スターリンのどうやら危篤らしいニュース。紛糾した権力闘争が予見される。
3月6日。
書き進めるが、満足がいかず、苦しい。
3月9日。
『欺かれた女』を完成させるべく、先へ書き進めるように努める。晩、ベートーヴェンの三重協奏曲、ヴァイオリンが弱すぎる。
3月10日。
「チャプリン」の『ライムライト』を観る。魅力的。(# このころチャップリンも国外追放となっていたはず。)
3月11日。
入浴、ひげを剃り、身仕度を済ます。『欺かれた女』公園の描写を書き直す。
3月12日。
晩Kと、カリフォルニアを去ったことは正しかったか話す。おそらく無分別なことであっただろう。あの家は一から十まで私のもの。この家は好きになれない。
3月13日。
小説をペン・クラブで朗読。まずまずの出来。目にみえる聴衆の関心。あとから多くの共感が寄せられる。
3月14日。
きのうの出来事に満足。
3月15日。
『欺かれた女』終わりの部分を書き進める。
3月16日。
皮膚をこすらないように注意を払ったので、夜、眠りは妨げられなかった。
3月18日。
「短編小説」『欺かれた女』を書き終わる。91枚。10ヶ月。後半はしんどかった。
3月20日。
隣接の土地に私たちの希望にかなう家を家賃と同じ価格で建ててはという提案を受ける。
3月21日。
カリフォルニアから残りの荷物。読書机、食器戸棚、レコード。最もお気に入りのものが割れていて腹立たしい。
3月24日。
風邪をひき、声がしわがれ、体調悪化への兆し。夜、腹部がひどく弱り不快感があまり強いので医者に往診を頼む。まずは、安静を保つ。
3月26日。
気分まずまず。
3月27日。
リュメーリン夫人から『欺かれた女』の全浄書到着。よい仕上り。午前も午後も目を通す。
3月28日。
浄書結びの部分の校正と書き直し。
3月29日。
雑誌「メルクーア」に掲載する分の校正。
3月30日。
エーリカはストーリーを全体としてほめてくれた。
3月31日。
エーリカと浄書に手を入れる。
***
ALL REVIEWSで、「日記」というキーワードで検索される200件(以上)の書評のうち、対象書籍を読んだことがあるものを列挙してみた。意外と少ない。
『ツヴァイク日記 1912~1940』(東洋出版)
https://allreviews.jp/review/443
『70歳の日記』(みすず書房)
https://allreviews.jp/review/4414
ジャン=ポール・サルトル 『奇妙な戦争―戦中日記』(人文書院)
https://allreviews.jp/column/3673
『大読書日記』(青土社)
https://allreviews.jp/review/3417
『衝動買い日記』(中央公論新社)
https://allreviews.jp/column/2688
『富士日記』(中央公論新社)
https://allreviews.jp/column/1879
『東京焼盡』(中央公論新社)
https://allreviews.jp/review/2131
『池波正太郎の銀座日記〔全〕』
https://allreviews.jp/column/1486
『荷風と東京 『断腸亭日常』私註』(岩波書店)
https://allreviews.jp/review/2177
『青年小泉信三の日記―東京‐ロンドン‐ベルリン 明治四十四年‐大正三年』(慶應義塾大学出版会)
https://allreviews.jp/review/2712
『戦中派不戦日記 山田風太郎ベストコレクション』(角川書店(角川グループパブリッシング))
https://allreviews.jp/review/2356
『百代の過客 日記にみる日本人』(講談社)
https://allreviews.jp/review/2119
明日は、「読みたい」ものを探そう。
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